坂井のエース吉川大翔(3年)が、強打の明豊打線を前に力尽きた。1点リードの8回裏2死二塁から逆転2ランを浴びた。「ボールでも良かったのに、少し球が中に入った。自分の甘さです」。最速138キロでキレの良さが売り物のサウスポーが128球目、127キロの直球を悔しげに振り返った。

 昨秋までは180センチ、67キロ。スタミナが5回までしか持たなかったことで、増量作戦に踏みきり、学校におにぎり10個とパンを持ち込み、休み時間、練習中にパクつき、家の晩ご飯はどんぶり3杯を食べた。今夏は73キロで迎えた。一方で同じ細身の左腕でもある阪神能見の動画を研究、右腕の使い方をまねて、レベルアップをはかった。

 しかし、福井大会5試合をほぼ1人で投げ抜いたことで、体重は再び2キロ落ちて、71キロへ。「球に力がなかったし、真っすぐが真ん中に集まった。本来の出来からはほど遠かった」と川村忠義監督が言うように、万全ではなかった。

 6回の同点2点打、7回には2点勝ち越す三塁手の失策を誘ったラッキーボーイ山内良太三塁手(2年)の活躍もあり、全員野球で夏の甲子園初勝利まで、あと1歩まで迫った。それだけに、エースは悔しさを募らせる。吉川は「みんなに助けてもらって、これ以上点はやれないと思ったのに…」。被安打15の7失点に終わった甲子園の経験を糧に、東都の専大に進学を希望。次は神宮のマウンドで活躍を目指す。