中学から強肩強打の捕手として広島県内では有名だった。「広島で自分よりすごいキャッチャーおらん」と自信満々。だが、広陵での2年半が中村を変えた。入学直後、機敏に動く先輩の姿に衝撃を受け、練習に没頭。1年生ながら春の県大会から正捕手になった。

 主将経験も中村を成長させた。昨秋の県大会準々決勝敗退後に主将に就任したが、チームをうまく導けなかった。今春の県決勝で敗れ、「人間的な部分が足りなかった」と反省し、岩本に主将の座を譲った。夏に向けて、練習後に主将経験者の佐藤と岩本の3人で話し合いを重ねるとチームがうまく回り出した。「広陵があったから、これからも堂々と生きていける」。心身ともに成長した。

 準優勝の悔しさはこれからの糧にする。「くよくよしていたら上に上がれない」。早実・清宮らとU18W杯の日本代表として、すぐに世界一を目指す戦いもある。そして、その先に次のステージが待つ。中村は「球界記録を作れるような選手になりたい」とプロでの目標を掲げた。女手一つで育てた母啓子さんとの約束“日本一”は、プロの世界で果たす。【中島万季】

<中村の記録>

 ◆1大会個人最多安打19 86年水口(松山商)に並ぶ大会タイ。

 ◆1大会個人最多二塁打6 15年杉崎(東海大相模)以来で4人目の大会タイ。

 ◆大会5度目の猛打賞 85年佐藤(宇部商)08年浅村(大阪桐蔭)の各4度を上回り史上初めて。