酒田南のエース左腕阿部雄大(2年)が1失点完投で、サヨナラ勝ちを呼び込んだ。8回に同点とされたが、自己最速を2キロ更新する138キロを計測するなど最少失点で乗り切った。先頭の9回は中前打で出塁。1死満塁から、3番芝慎之介外野手(2年)の右前打でサヨナラのホームを踏んだ。チームは庄内地区のライバル鶴岡東を2-1と退けて、3年連続4強入りした。23日に準決勝が行われる。

 阿部が珍しく雄たけびを上げた。8回。内野ゴロで同点とされ、なお1死三塁のピンチ。3、4番を速球で立て続けに見逃し三振に切って取った。4番の時には自己最速の138キロをマークした。「ランナーを出してから、力勝負に勝てたのがよかった」。その気迫が、9回サヨナラ勝ちへの大きな流れをつくった。

 酒田南は強打で知られるが、新チームは後半勝負の1点を勝ち越すスタイル。爆発力は期待できない。5回の先制は阿部自らの適時三塁打。「3年生がいた時は3、4失点してもよかった」と話すエースの負担は増えた。昨夏やらなかったウエートトレを、今夏は下半身とのバランスを考えながら取り組んだ。勝負どころで変化球に頼り痛打された、これまでの投球も反省。「真っすぐで三振を取った方がベンチが盛り上がる」と言い、投球練習では速球を内外角に投げ分けた。厳しいコースへの制球力を磨き続けた。

 1年秋から背番号1を着ける。昨秋の盛岡大付(岩手)との東北大会準決勝、今夏の日大山形との山形大会準決勝とも1点差で敗れた。近づいていた甲子園を逃し「1点の重みを知った」と言った。現チームの打撃力も知るからこそ、できる限り少ない失点の投球を強く意識する。鈴木剛監督(36)は「彼(阿部)と心中だと、チームで話している」と絶大な信頼を置く。

 今秋の庄内地区予選でチームが2敗して「3年生に笑われた」と苦笑した阿部は、今大会3試合20回2/3を投げて2失点と安定する。23日の準決勝は、夏に敗れた日大山形と再び激突。「負けたくない気持ちです」。1つ上の先輩を見返して、褒めてもらう一戦になる。【久野朗】

 ◆阿部雄大(あべ・ゆうだい)2000年(平12)7月28日、山形・鶴岡市生まれ。小学4年から野球を始め投手一筋。鶴岡三中から酒田南に進学し、1年夏に背番号10でベンチ入りし、公式戦デビュー。181センチ、76キロ。左投げ左打ち。家族は母、姉、祖父母。