能代松陽(秋田1位)が、優勝候補の一角・八戸学院光星(青森3位)を2-1で下し、3年ぶりの準々決勝に進出した。165センチのエース左腕佐藤開陸(かいり、2年)が9回6安打9奪三振1失点で完投。秋田にまた「小さな大投手」が現れた。

 最後は切れ味抜群のスライダーで締めた。2-1の9回2死一、三塁。佐藤開は小さな体を目いっぱい躍動させ、真ん中低めに117キロの宝刀を投げ込んだ。相手のバットが空を切った瞬間、左手でガッツポーズをつくり、跳びはねて整列に加わった。

 佐藤開 8月の練習試合で負けていた。最後は三振で締められて良かった。光星に勝って自信になる。

 クレバーだった。唯一の失点となったソロ本塁打を浴びた3回以降は毎回走者を出したが、直球から変化球主体に切り替えた。4回2死一、二塁のピンチではアクセルを踏み、自己最速を1キロ更新する140キロで一ゴロに仕留めた。「後半に変化球を持ってくることで絞りづらくなる。走者が出るまでストライク先行。ピンチになるとギアを上げた」。自信を持つギアチェンジ投法で131球を投げきった。

 系譜を継ぐ男だ。秋田は伝統的にヤクルト石川雅規、ロッテ成田翔など170センチ以下の「左投げの小さな大投手」を輩出してきた。佐藤開の脳裏には、同郷の偉大な大先輩の残像があった。「秋田の投手は小さい人ばかりだけど、野球に身長は関係ない。成田選手に負けないようにスライダーを磨いている」と“成田翔2世”を意識した。

 両親からは「自分の力で道(陸)を切り開け」という意味を込めて、開陸と名付けられた。黒沢尻工(岩手2位)と対戦する今日15日の準々決勝に向けて「自分で道を切り開けている感はある。体力を考えて、次も打たせて取る」と自信を見せた。秋田に再び現れた「小さな巨人」が、初のセンバツへ導いてみせる。【高橋洋平】

 ◆佐藤開陸(さとう・かいり)2000年(平12)8月14日、秋田・鷹巣町(現北秋田市)生まれ。鷹巣南小1年から野球を始め、鷹巣南中では軟式野球部に所属。能代松陽では1年春に背番号1でベンチ入りし、2年春から再びエース。165センチ、65キロ。左投げ左打ち。家族は両親と弟2人。