花巻東(岩手1位)が初出場の由利工(秋田3位)を逆転で4-2と下し、4年ぶりの準決勝に進出した。背番号17の最速140キロ右腕、西舘勇陽(1年)が9回2安打2失点(自責0)で完投し、新怪物候補の片りんを見せた。この日、準決勝進出を決めた4チームの先発投手は、いずれも自責0で好投。安定した投手力を武器に、明日17日に行われる準決勝で激突する。

 最後の打者を二飛に仕留めると、西舘はガッツポーズを繰り出さず、控えめな笑みを浮かべて整列した。2回に唯一浴びた2連続安打で2点先制を許すも、動じない。182センチの長身から投げ込むスライダーでカウントを稼ぎ、決め球スプリットで凡打を誘って公式戦初完投をマークした。

 西舘 自分が弱気になっても勝てない。気持ちを切り替えて、逆転してくれると思って投げた。

 高い修正能力を見せた。14日の角館(秋田2位)戦では制球に苦しみ、5つも四球を出した。この日の投球練習では、通常の6歩半の踏み出しになるように逆算して調整し、この日わずか1四球。「昨日は6歩半もなかった。今日は下半身を使って低めを意識して投げられた」と胸を張った。

 花巻東の新怪物候補だ。西武菊池雄星と日本ハム大谷翔平に続いて、西舘は1年夏からベンチ入りを果たした。1年秋からは、かつて雄星が背負った出世背番号「17」を任されている。西舘は「自覚はある。期待して使ってもらう以上は、重く受け止めて、3年生までに成長したい」と前を向く。2戦連続で先発に起用した佐々木洋監督(42)も「落ち着いて投げていて、頼もしく思えた。変化球を器用に投げるし、将来が楽しみ」と絶賛した。

 明日17日の準決勝で日大山形(山形3位)を撃破して、12年以来6年ぶり3度目のセンバツを確定させる。過去2度は雄星、大谷を擁して出場している。西舘は「今は甲子園が見えている状態。優勝目指して、一戦必勝でやっていきたい」と意気込む。新怪物候補が真の怪物になる。【高橋洋平】