聖光学院(福島1位)が花巻東(岩手1位)を6-4で振り切り、地元開催で念願の初優勝を決めた。投げては先発のエース右腕衛藤慎也(2年)が11安打を浴びながら、9回4失点で完投。打っては4-4の8回に、5番須田優真内野手(2年)が左翼ポール際に決勝本塁打を放った。秋開幕まで、ともに故障に苦しんでいた投打の柱が躍動した。初出場の明治神宮大会(11月10日開幕)でも優勝を狙う。

 涙が止まらなかった。力のない飛球が田野孔誠遊撃手(2年)のグラブに収まると、衛藤は両手を大きく広げて喜びを爆発させた。花巻東の整列を尻目に、マウンドには次々とナインたちが集まり、夏の甲子園出場決定さながらの号泣で初優勝の味をかみしめた。

 衛藤 うれしすぎてホッとした。夏の時点で東北大会で優勝するなんて想像できなかった。夢のよう。

 今大会4戦目の先発で毎回走者を背負った。4点あったリードを5回に追い付かれたが、秋の県大会、東北大会通じて初のビハインドは許さなかった。「斎藤監督(智也、54)と横山部長(博英、47)を初の神宮に連れていきたかった。任された以上はやるしかなかった」。11安打を浴びたが、最速141キロの直球と切れるスライダーを駆使して9回4失点で完投した。

 元捕手の衛藤が救世主となった。1年前の5月に地肩の強さを買われて投手に転向するも、慢性の右肘痛に苦しみ今年の7月に手術。秋絶望と診断されたが、予想以上に回復が早く、秋の県大会開幕2週間前に復帰。公式戦初登板となった須賀川桐桜との1回戦では9回2安打11奪三振完封で実力を証明し、今大会から背番号1を任された。斎藤監督は「けがに苦しんでいた衛藤の台頭でチームが90度変わった。悔しさもあったと思うけど、リベンジしたい気持ちが報われよかった」と褒めたたえた。

 新チームはクリーンアップが「近年最強」との評価だったのに対し、一方の投手陣は不安視されていた。欠けていたピースを衛藤が埋め、投打に充実して初の神宮に乗り込む。「自分がけがしていた時に、他の投手が頑張ってチームを支えてくれた。投手陣の思いを背負って、神宮では絶対にてっぺんを取る」。投げられる喜びを胸に、マウンドに立つ。【高橋洋平】