第90回記念選抜高校野球大会(23日開幕、甲子園)に6年ぶり3度目出場の花巻東(岩手)は19日、甲子園練習を行った。最速142キロの西舘勇陽投手(2年)が、OBの菊池雄星(西武)や大谷翔平(エンゼルス)が背負った出世番号「17」で聖地デビュー。マウンドに立ち、新怪物候補の投球も披露した。偉大な先輩2人でも達成できなかった全国制覇へ、まずは初戦の東邦(愛知)戦に全力を注ぐ。

 花巻東の背番号17には、新怪物候補の雰囲気が漂っていた。西舘が「大谷2世」として聖地のマウンドへ。大谷や菊池が当時つけていた生地を背中に縫いつけ「(大谷)翔平さんや(菊池)雄星さんなど、すごい人がつけた番号なので、重みを感じながら、自覚を持ってプレーしたい。もらった時は純粋にうれしかったです」。大先輩を超える決意も固めた。

 憧れの舞台が、さらに気持ちを高めてくれた。打者は立たなかったが、捕手に向かって試投。躍動感たっぷりの姿に、スタンドの観客からはどよめきも。「甲子園に来たのも初めて。楽しかった。マウンドからの距離も近く感じて、すごく投げやすかった」。強打を誇る東邦打線封じにも、好感触を得た。

 高校入学後、初の冬を乗り越え、甲子園で活躍する土台を築いた自信もある。身長は2センチアップの184センチ。大きめの茶わん10杯を目標に白米を毎日摂取し、体重も5キロ増の77キロ。体をひねって力をためる新フォームも固まりつつある。今月8日から行った関西遠征では強豪校相手に結果も出た。カーブ、スライダー、スプリットに加え「もう少し速いカーブがあったらいいなと思った」と、新球ナックルカーブも習得中。菊池や大谷を育てた佐々木洋監督(42)も「西舘は、どんどん成長してくれている。投手陣は全体的に体ができてきたので楽しみ」と大きな期待を寄せた。

 優勝旗を初めて東北に持ち帰る気持ちも人一倍強い。「3・11」は西舘の誕生日でもある。「縁も感じる。まだまだ完全に復興できていないので、甲子園での全力投球や全力疾走とか、元気な姿を見せたい」。数多くの思いを「17」に背負った。【鎌田直秀】