聖光学院(福島1位)が、2-1の延長10回サヨナラで東北(宮城1位)を破り、6年ぶり3度目の優勝を決めた。10回裏1死一、三塁の好機に、4番の須田優真内野手(3年)が左前適時打。高坂右京投手(3年)の好投に報いた。3月のセンバツ2回戦で大敗後、崩壊寸前だったチーム力が、今大会で強豪を相手に試練を乗り越えたことで、投打ともに完全復活への手応えを得た。昨秋に続く東北連覇の次は、夏の甲子園12年連続出場に挑む。

 「優勝決定打男」の真骨頂だ。聖光学院・須田が、チームに笑顔を導いた。低め直球に詰まったがフルスイング。「落ちてくれ~と願って走りました。みんながつないでくれた打席。とにかく外野まで飛ばそうと。サヨナラ打は、やっぱりうれしい」。全員で号泣して喜んだ昨秋の優勝から8カ月。花巻東(岩手)との決勝で、同点の8回に本塁打を放った再現となった。

 初回、8回と好機で凡打だった悔しさをぶつけた。「試合に出ている人は、支えてくれている人のためにも、責任がある。高坂も踏ん張っていたので、ここで決めようと強い気持ちでした」。2回戦でも敗色濃厚の場面でソロを放ち、救った。準々決勝はロースコアでの接戦。前日10日の準決勝は4失点からの大逆転。斎藤智也監督(54)も「優勝が目標ではなかった。県大会よりも1ランク上の相手と4試合できて、良い勉強をする機会ができて乗り越えたことが大きな収穫」。さまざまな苦境を打破したことに価値があった。

 センバツで東海大相模(神奈川)に4-12。日本一を目指して臨んだ自信を粉砕されて、チームはどん底だった。「こんなはずじゃない」「もっとできるのに」の慢心が、邪魔をしていた。同監督からは「ぶざまなチーム」と形容された。矢吹栄希主将(3年)は「言われて当然だったけれど、やっぱり悔しい気持ちだった。自分たちの考えを変えなきゃ夏(の甲子園)もないと思った」。短期間での意識改革に着手した。

 移動のバスや寮の部屋は、ゴミ一つ落ちていないよう徹底した。練習での緊張感を保つため、連日行う紅白戦は3イニング制に。スコアは0-4からスタート。控え組相手に逆転できなければ罰走も課した。常に危機的状況に追い込む荒療治は「結果を出すには、やるべきことをやる過程が大事なことを再確認した」(矢吹)。打線のつなぐ意識や結束力は、バント練習強化で回復させた。

 福島大会12連覇に挑む夏まで、あと1カ月弱。投手陣も、3月に右肘を手術したエース右腕・衛藤慎也(3年)が復帰し、高坂も自信を得た。腰痛の上石智也(3年)も順調に回復しており、投打の戦力は昨秋以上に整ってきた。東北大会のテーマだった「ぶざまからの脱却」に成功した。【鎌田直秀】