札幌地区で、3年ぶりの南北海道大会進出を狙う札幌南が札幌あすかぜを8-1の7回コールドで下し、3季ぶり勝利を挙げた。00年夏の甲子園に主将として出場したOB田畑広樹監督(35)が今春就任後、公式戦初の白星となった。

 チーム一丸で勝利を決めた。札幌南は1回1死、2番野村虎太郎(3年)の右越えソロでスイッチを入れると、7番鈴木岳彦(3年)まで6連打で4点。7-1の7回1死二塁からは、この試合ただ1人安打のなかった9番池田伊織(2年)が中越え適時二塁打を放ち、出場10人全員安打で締めた。

 新体制初陣となった春の地区初戦は、札幌琴似工に9回に逆転され敗れた。田畑監督就任から2カ月。春は惜しくも結果につながらなかったイズムが、徐々に形になってきた。同監督は「選手が考えながら取り組んできたことを試合で出してくれた。すごくうれしいです」と喜んだ。

 就任後は、選手の自主性を重んじ、それを生かすためのスローガンを考えた。「頭を使う野球というけど、それ以上に体で負けていたら勝てない」との持論から、定めた言葉は「フィジカルは戦術を凌駕(りょうが)する」。練習メニューは、伝統的に選手が考える。その際、必要な人材があれば、自身の人脈を用い、陸上の専門家、股関節ストレッチのトレーナーなど6人の指導者を招き、効果的な理論と手法で鍛えられるようサポートした。

 メンバー選考には1カ月単位での選挙を導入。全員が監督になったつもりで、練習試合の結果や日頃の取り組みを元にベンチ入り18人を選ぶ。この日先発の高橋孝輔(3年)は春の9番から、エース背番号に変わり「1番になって周りから表情が変わったと言われた」と言う。客観的な見方を認識させる作業が、さらなる精神的進化の糸口となった。

 現チームは秋、春と2季連続地区初戦敗退。三戸創世主将(3年)は「すごくもがき苦しんでいたのが、この1カ月ぐらいで、すごく成長できている感じがする」と手応えを口にした。復活の1歩を踏み出した道内屈指の進学校が、OB監督とともに18年ぶり「甲子園出場」という難問を、解きにいく。【永野高輔】