69キロのスローカーブが効果的だった。佐和(茨城)のサイドスローのエース佐久間太一投手(3年)が51キロの緩急差で古豪、取手二を翻弄(ほんろう)した。最速120キロの直球など計7球種を武器に9回を5安打2失点。三振は0だったが、タイミングを外し27アウトのうち20個を凡フライで奪った。

 入学時には上手投げだった。1年生の夏に当時の岡英樹監督(50)に勧められてサイドスローに転向。遅球は、パドレス牧田和久投手(33)に刺激を受けて身に付けた。「牧田さんのように、力のあるバッターを力のない球で打ち取ってみたい」と果敢に挑戦。怖がらずに投げ込んだ。

 新チームが始動してすぐの昨年7月末、母絹子さんをがんで亡くした。チームメートから「お母さんのためにも気を落とさないで頑張れ」と励まされた。「先輩も後輩もたくさん連絡をくれた。支えてもらっていることを実感した1年。感謝です」。そんな仲間のためにも勝ちたかった。

 この日の朝も、絹子さんに線香を上げ「行ってきます」と家を出た。「きっと見守ってくれる」。第3打席、6回裏1死三塁。二塁方向に飛んだ佐久間の打球は、相手二塁手がはじいて適時内野安打。だめ押しの1点を追加した。「あれはお母さんが一押しをしてくれたのかな」。投打の活躍を天国の母に届けた。【戸田月菜】

 ◆佐和 1985年(昭60)創立、ひたちなか市の県立高校。創立と同時に野球部も創部。過去の夏の最高成績は県16強。17年秋、18年春はともに地区大会で敗退し、県大会を逃した。部員39人、マネジャー6人。野球部では毎年、東日本大震災の被災地へ出向きボランティア活動を行っている。飛田吉雄校長。