今年のセンバツ出場校・彦根東(滋賀)が5回コールド勝ちで夏のスタートを切った。センバツ3回戦で花巻東を9回までノーヒットも敗戦したエース増居翔太投手(3年)が、4回を7奪三振無失点。本調子ではなかったが、貫禄の投球を見せた。

 脚光を浴びたセンバツの後は、直球の走りが悪くなった。「大会が終わったら調子を崩すタイプ」という。フォームの調整など試行錯誤を重ねたが、「まだ出来は6、7割」。だからこそ、この日はコントロールを意識した。直球主体の投球で与えた四死球はゼロ。制球は安定していた。大津打線を許した安打は1本だけと完璧な内容だった。

 この日の会場は同校から徒歩で約20分の彦根球場。野球部の勇姿を見ようと、授業を終えた約50人の生徒が観戦していた。増居のクラスメート、野瀬賢人さん(3年)は「朝も7時過ぎには教室で自習をしている。センバツで活躍した後も態度はまったく変わらない」と言う。真面目な人柄で、マウンドだけでなく、教室でも信頼を集める。

 学校のある彦根城の城主・井伊家は「赤備え」で知られ、この春は甲子園のスタンドが真っ赤に染まった。「悔いのないように戦いたい」。再びその景色を見るために、増居は左腕を振り続ける。【中野椋】