3年連続の夏の甲子園出場を狙う盛岡大付が6-5で盛岡商にサヨナラ勝ちし、準決勝に進んだ。3点ビハインドで迎えた9回裏、1死二塁で2番佐々木俊輔内野手(2年)の中越え適時二塁打で同点。その後2死一、三塁となり、一塁ランナーが飛び出すトリックプレーの間に、三塁走者の佐々木が本盗に成功し、劇的に勝ち越した。一昨年からチームカラーにもなっている、見る者に興奮を与える「盛付(もりふ)劇場」が、日増しにパワーアップしてきた。

 王者は崖っぷちまで追い込まれていた。1点リードで迎えた9回表、まさかの満塁弾を浴びる。逆に3点差をつけられ、万事休したかに見えた。それでも、花巻南との3回戦で泣きながら逆転サヨナラ打を放った佐々木俊は「自分たちは良い流れで来ている。負ける気がしなかった」。9回裏、下位打線が奮起し1点差にまで追い上げる。さらに1死二塁、一打同点の場面が佐々木俊に巡ってきた。今大会ラッキーボーイ。あっさり同点打を放つと、劇的な本盗まで決めて、再びチームをよみがえらせた。

 盛付劇場の「名プロデューサー」関口清治監督(41)は、勝負どころでの秘策を温めていた。「相手が右投手ならやってなかった」と、三塁走者が見えない左投手用のトリックプレーを用意していた。中飛と四球で2死一、三塁となる。そこで、一塁走者が飛び出したのに相手先発左腕が反応した瞬間、佐々木俊は「いける」と確信しダッシュ。次の瞬間、本塁上で歓喜が爆発した。

 失敗を糧にした。今春の地区大会準決勝の盛岡中央戦。同じ一、三塁の場面で関口監督が出した本盗のサインを覚えておらず、佐々木俊はアウトになった。「ミスする場面じゃないぞ」と注意され、「もう2度と繰り返さない」と心に決めていた。父一(はじめ)さん(44)は高校時代、専大北上の一塁手として岩手大会決勝に進んだが、一関学院に敗れて準優勝に終わった。この夏2度目の主演を果たし、勝利を呼び込んだラッキーボーイは「自分がお父さんの代わりに甲子園に行く」と誓った。