両手を2回高く突き上げた。藤代・中山航投手(2年)が1-2で迎えた8回表無死満塁から登板し、2回無失点の“伝説の投球”を見せた。「勝ったという感情より、やっと終わったと。打ち上げた瞬間勝ったと分かりましたが、捕った瞬間実感が湧いて、2回目の手を上げました」と笑顔を見せた。

 ケガから復帰したエース稲荷田朝陽投手(3年)が3連続四球。菊地一郎監督(48)も「負けを覚悟した」という大ピンチでマウンドへ。躍動感のある上手投げ右腕は二ゴロ、三振、三振と危なげなく3つのアウトを奪った。中山は「緊張したが、先輩方が『打たれてもいい。腕を振れ』と言ってくれたので開き直って投げた。全部サイン通りに投げただけです」と28球全て直球。最速を3キロ更新する140キロを投げ込むなど、公式戦初登板とは思えない快投だった。

 極め付きは2-2の同点に追いついた8回裏2死三塁。勝ち越しの中前適時打を放った。「自分が打てなくても最終回は1番から。打てなくても勝てると思っていました」。菊地監督からも「1000点満点でしょう。もう点数をつけられない。伝説の投球」と評されるほどの活躍だった。中山は「甲子園に行きたくて藤代に来た。甲子園に行きたい」。未来の怪物誕生を予感させた。【久永壮真】