第100回の夏、秋田決勝は2年連続で明桜と金足農が火花を散らす。昨夏準優勝の金足農は最速150キロ右腕の吉田輝星(3年)が由利から14個の三振を奪い、7-4で下した。

 金足農の吉田が9回6安打4失点で完投し、2年連続の決勝に進出した。この日最速の147キロ直球をテンポよく投げ込み、追い込むとギアを1段上げた。減速しながらも伸びのある130キロ台の“抜いた直球”でコースを突き、圧巻の14奪三振。5回までは無安打投球だった。「途中までヒットを打たれなかったのはよかった」。反省点に挙げたのは、唯一の失点を許した6回。浴びた6安打中4安打と味方失策が重なった。「エラーするような場所に打たせた自分が悪い」と切り替えた。

 冬場の地獄のようなトレーニングが吉田を成長させた。雪の降る11月から2月までは長靴を履いて雪のグラウンドで鍛錬した。当時100キロあった4番打川和輝内野手(3年)を肩車と抱っこで担ぎ、三塁ベースからフェンスまで往復を繰り返した。ポール間走では、吉田の足跡でわだちができるぐらいまで走り込んだ。この日、伝令でマウンドに内野手が集まった時に自然と発せられた言葉が「冬を思い出せ」だった。先に決勝進出を決めた吉田は「明桜の山口」とやりたいと切望し、それが実現した。「自分のリベンジと先輩たちの夢の分まで甲子園に行きたい」。それだけの自信が、今の吉田にはある。