昨秋に就任した片桐健一監督(44)率いる桐蔭学園の夏が終わった。相手は今春センバツに出場した優勝候補の慶応。2点差をつける場面もあったが、2度逆転を許し、追いつけなかった。

 昨夏・秋と公立高校に敗れた。その後に就任した片桐監督は練習量を増やし、選手に挑戦者としての意識を植え付けた。「練習でやってきたことを試合で出そう」と毎日のように言い続けた。選手と練習メニューを話し合い、甲子園出場経験もあるが、他校の監督には恥を捨てて話を聞いた。

 春も公立高校に県大会初戦で敗戦。だが、夏までの練習試合で他県の強豪と接戦をする場面が増えた。「自信と言うよりも安心してきました」と片桐監督は手応えを感じていた。星野太河主将(3年)も「実戦を多めにして実力も付いてきた。打撃は序盤で点を取るように、守備では球際をしっかり取るように練習した」と自信をのぞかせていた。チームは5試合連続2ケタ安打。この日の守備は強力打線に無失策で試合を作った。

 「背番号10番台にいい選手がいるチームは強い」という片桐監督。この日の先発は6月ごろから調子を上げてきた背番号13の阿部優太投手(3年)。強力打線を相手に5回途中4失点と踏ん張った。阿部は「調子は悪くなかった。自分の力を出せた夏だった」と振り返った。2番手で登板したのも背番号15の伊礼海斗投手(2年)。練習試合で好投し直前でメンバーに入った。3番手の背番号10の長谷川颯投手(2年)も1イニングを0で抑えた。

 星野主将は「100%は出たけど120%出ていない。そういう意味では出し切れてない」と悔しそうに語った。それでも片桐監督は「この夏は力を出し切ろうと言っていた。負けはしたけど、ノーシードから5試合もやって選手は良くやったと思います。たくましくなりました」と褒めた。たった1年間だが、片桐監督の理想とするチームに近づいたことは間違いない。3年生の残したものを下級生が受け継いで来年さらに強いチームを作って甲子園を目指す。【松熊洋介】