3-6で迎えた8回裏2死、小山台・エース戸谷(とや)直大投手(3年)の113球目。これまで磨いてきた外角の直球に運命を託し、渾身(こんしん)の1球で中飛に打ち取った。9回表の攻撃での逆転に懸けたが、願いはかなわず。03年以来の都立勢の甲子園出場には、あと1歩届かなかった。それでも、準々決勝から3試合連続での完投に「悔しさはありますけれど、最後まで楽しくできた。粘り強く投げられた」と充実感をにじませて笑った。

 小山台ナインは最後まで、堂々と戦い抜いた。試合後、戸谷はチームメートの肩を抱きながら、すがすがしい表情だった。「今日は負けたけれど、前半は先制できた。私立相手にも少しは戦える姿を見せられたかな」。ここまで来られた理由の1つに、メンタル面の工夫があった。「相手のほうが上、と弱さを受け止めた。挑戦者として開き直ったのがよかった」。都立進学校のため、ナインは受験で入学した。スポーツ推薦はいない。福嶋正信監督(62)も「来た子を育てた。選手たちは本当にみんなよくやりましたね」と目を細めてたたえた。

 誇るべき大きな挑戦が終わった。文武両道を貫くナインは大学受験に向かう。戸谷は「大学に進学したいと思って小山台を選んだ。筑波大を目指す」と新たな目標に1歩を踏み出す。【戸田月菜】