センバツ準優勝校の智弁和歌山が夏の初戦で散った。それでも、来年につながる“新しい戦力”が加わっていた。

 今年のセンバツ、国学院栃木との3回戦を控えたミーティングの時だった。中谷仁コーチ(39)がナインに映像を見てきたか? と尋ねると、選手たちは「すみません、見ていません」と言う。中谷コーチは「このやろー!」と一喝した。「お前らが試合をするのに、僕が話すことを受けるだけ。自分で調べないのかと。ここからはお前らがやれ、と。成長する期間だし、ここで学んでほしい」。これが「データ班」が誕生するきっかけとなった。

 センバツ決勝では大阪桐蔭に敗戦。優勝インタビューで大阪桐蔭・西谷浩一監督(48)が「うちのデータ班が…」と話したのを中谷コーチは聞いていた。元々ビデオを撮ってはいたが、投手7人でデータ班を結成。阪神や楽天などで捕手として活躍した中谷コーチが、現役時代に使っていた配球表やチャートを使い、分析を始めた。

 この日も相手校の近江のデータを集めたが、投手陣は3本塁打を浴び、打者陣は3得点に抑えこまれた。アルプスから見守っていたデータ班の湯浅公貴投手(2年)は「コースを攻めれば長打はないと分析していたが、3本塁打を許してしまった。データ不足が負けにつながったかもしれない。打者の特徴をもっと見抜けていたら…。自分たちの準備が足りなかった」と話した。

 中谷コーチは試合前、データ班について「任せる以上はあまり言わない。『ここを見ろよ』とかあるけど、それも勉強。反省すればいい」と話していた。悔しい敗戦を糧にして、データ班もさらに成長するはずだ。