ドカベンが甲子園に帰ってきた。

 大会第4日の8日、「レジェンド始球式」に、浪商(大体大浪商)OBで、エースだった牛島和彦氏(57)が登板。

 その雄姿を、高校時代にバッテリーを組んだ故・香川伸行氏の弘美夫人、次女貴瑛さん、三女優瑛さんが見守った。

 生前の香川氏は、水島新司氏の人気野球漫画「ドカベン」の主人公で、捕手の山田太郎に似ていることで、「ドカベン」のニックネームがついた。浪商1年から正捕手で、3度甲子園に出場。当時から牛島-香川の1年生バッテリーは話題だった。

 体重は公称92キロだったが体重計の針は1周した。そのキャラクターは全国区で、まさに甲子園の申し子だった。79年、高3の夏、野武士軍団で知られたチームにあって、ドカベン香川は大会史上初の3試合連続本塁打のスラッガーぶりを見せつけた。

 その後は、南海ホークス(現ソフトバンク)でプレーしたが、引退後の14年(平26)9月26日に心筋梗塞で死去。牛島とのバッテリーは、会話もなく、1度もブルペンでコンビを組んだことのない間柄だったが、本番では最強だった。香川氏は「おれは牛島をライバルと思っていた」と振り返っていた。

 この日、牛島氏の始球式をネット裏で見届けた弘美夫人は、浪商のユニホームを着て抱き合うツーショット写真を手にしていた。「伸君が生きていたら、2人でバッテリーを組んだかもしれませんね。その光景が目に浮かんで、まるで夢のような空間でした」と感慨深げだった。