2年ぶり6度目出場の常葉大菊川(静岡)が、5年ぶりの16強進出を決めた。日南学園(宮崎)を3-0で夏通算10勝。県勢では9年ぶりの大会2勝だ。「フルスイング打線」の同校だが、遊撃手の奈良間大己主将(3年)を軸に堅守で4併殺を記録。エース漢人友也(3年)の88球完封をアシストした。3回戦は17日、第1試合(午前8時開始)で近江(滋賀)と対する。

 9回表2死一塁。最後の打者の打球も、奈良間の前に転がった。二塁フォースアウトで試合終了。益田東(島根)との1回戦(8-7)とは対照的な勝ち方で、3回戦進出を決めた。二塁手の東虎之介(3年)と4併殺を完成させた奈良間は、充実の表情で謙虚な言葉を並べた。

 「県大会から打ち勝つ野球が多かったですが、初めて、みんなで守って勝てました。1つでもエラーがあったら、大量失点につながっていました。今日はできすぎですね」

 「5センチ」が、合言葉だ。伝統のフルスイングで知られる同校だが、練習時間の多くを守備と走塁に費やしている。特に冬場は、ノックを繰り返して受けている。意識するのは、打球を捕球すると同時に、グラブをスッと5センチ、へその方向に引き揚げること。16年夏まで指揮した森下知幸前監督(現御殿場西監督)が伝授した基礎動作だ。その「5センチ」により、次の送球への流れを作っている。

 東は入学時を振り返り、「『これ、何の練習?』と思いましたが、今思えば基礎になっています」。奈良間も主将で遊撃手だった赤井啓輔(亜大2年)からたたき込まれており、「冬場の基礎が、応用につながっています」と胸を張った。

 同校は、県大会6試合で失策は2つのみ。エース漢人は「二遊間に打たせれば、ゲッツーと思っていました。守備に助けられました」と信頼感を口にした。中堅手の榛村大吾(3年)も難しい飛球を次々と好捕し、「いいプレーが出て、それが打撃のリズムにつなりました」と言った。

 観衆は第1試合ながら、約4万1000人。選手たちは、07年センバツ優勝、08年夏の準優勝時と同様に守備でも甲子園を湧かせ、高橋利和監督(32)は目を細めて言った。「守備があれば、試合展開を計算できる。たくさんのお客さんの前で自信がついたんじゃないですかね」。

 再三の好走塁も含めて強さは本物。近江との3回戦も、見る者を熱くさせるに違いない。【鈴木正章】