「静岡のジーター」こと常葉大菊川(静岡)の奈良間大己主将(3年)は、最後まで甲子園で輝いた。近江(滋賀)戦の9回表無死。奈良間は先頭で、大飛球の左翼フェンス直撃三塁打を放った。「最後もいい当たりを打てたし、甲子園で終われたのは、うれしいです」。地方大会8割1分8厘は、出場56校全選手の最高打率で、甲子園3試合では13打数4安打の打率3割8厘。1回戦のバックスクリーン弾で、全国区の選手となった。

 奈良間は祖父正男さんと一緒に戦っていた。正男さんは大の野球好きで、小学時代から試合をよく見に来てくれた。「良いプレーをすると、喜んで褒めてくれました」。奈良間が中3時に正男さんが他界し、幼少から憧れたピンストライプのユニホーム姿は見せられなかった。だが、試合では正男さんの遺骨が入ったペンダントを、お守りとしてズボンの右ポケットにしのばせている。

 静岡大会決勝島田商戦でも「俺にはおじいちゃんが付いている」と気持ちを高め、この日も最終打席の前に、お守りに祈りを込めていた。「やりきったし、いい報告ができそうです」。充実の夏になり、墓前で正男さんと話すのが待ち遠しい。【鈴木正章】