宮城では「ミヤノウ旋風」の予感だ。宮城農が14-4の5回コールドで白石を下し、3年ぶり30回目の秋県大会出場を決めた。3番松井駿介内野手(1年)が先制打を含む3適時打を放つなど、15安打を浴びせて快勝した。東日本大震災で練習環境に苦労したが、今年4月に新校舎と新グラウンドが完成。金足農(秋田)の甲子園準Vに同じ農業高校として勇気をもらい、1年生レギュラー6人の下級生軍団が躍動した。

ミヤノウの得意攻撃が初回から機能した。この日4死球と「大当たり」の1番梅津隼也外野手(1年)が最初の死球で出塁。そして1死二塁から、3番松井の右越え先制二塁打から「猛打ショー」が始まった。さらに2本の適時二塁打でこの回3点を先取。続く2回には四球を挟んで5連打などで7点を奪い、10-0で大量リードした。

新チーム初公式戦となった8月18日の名取北戦は、わずか2安打の敗戦からスタート。そのタイミングで旋風を起こし始めた金足農の快進撃に、マネジャーを通じて途中経過に喜び、勇気づけられた。主将の木村翔捕手(2年)は「優勝を心の中で願っていました。いい刺激になりました」と、決勝は全員でテレビ観戦。そこから敗者復活トーナメントでは、3試合連続の2ケタ安打で県切符を勝ち取った。第3打席を除いて3適時打の松井は「相手がエースじゃなかったので、打ちやすかった。先頭が出ると攻撃にリズムが出る」と振り返った。

今年からようやく練習環境も整った。津波被害を受けた東日本大震災から、7年かけて新校舎が完成。7月上旬には金足農の造園緑地科の生徒が宮城農を訪れ、記念植樹を行った。新校舎横には両翼97メートル×中堅122メートルのグラウンドと、ブルペンが3つ入る室内練習場も整った。ゴミ処理場を耕した仮設グラウンドを離れ、木村主将は「(室内は)2カ所でマシン打撃ができる。その成果が出ました」と思う存分、打ち込みが可能になった。

メンバーは13人、うち2年生は3人のみ。赤井沢徹監督(38)は「経験値がない選手ばかりなので、1戦1戦を大事に」と9人野球で勝ち上がった金足農と同じく、少数精鋭での戦いを覚悟する。園芸科で造園の道に興味を持つ1年生エース右腕の及川彪磨は「前にもあったので、対処法は知っていた」と、右脇腹を痛めながら5回を自責点2で完投した。木村主将は「県大会までの1週間でもう1回、仕上げたい。ベスト8、ベスト4を狙えるような力はあると思います」と、旋風から台風の目になることを誓った。【中島正好】