今夏甲子園16強の常葉大菊川(静岡)が、同準優勝の金足農(秋田)に0-7の7回コールドで敗れた。高校日本代表でU18アジア選手権3位に貢献した奈良間大己内野手(3年)と根来龍真捕手(3年)を中心に、同校伝統の「フルスイング」を貫いたが、相手エース吉田輝星(3年)に11三振を喫した。3年生は、高校最後の公式戦を勝利で飾れなかったが、ラスト1プレーまで笑顔を通した。

超高校級右腕の剛球に、空振り三振を重ねても、常葉大菊川の選手はフルスイングを貫いた。3年生にとっては高校ラストゲーム。完敗だったが、終始、楽しそうにプレーした。

無安打に終わった奈良間も満足げな表情で言った。「全力プレーで楽しんでやる。菊川らしさは出せたと思います。負けたのは悔しいですが、勝負は楽しかったです」。吉田から初回に左前打を放った根来も「とにかくストレートを振っていこうと思っていました。吉田相手にも自分たちらしく、最後までやり切れたと思います」と振り返った。

奈良間と根来は、高校日本代表で吉田や根尾昂内野手(大阪桐蔭3年)ら、同世代トップレベルの選手と過ごし、大きな刺激を受けた。「打撃でも守備でも、みんな自分の理論をしっかり持っていました」と奈良間。普段は陽気な「普通の高校生」たちが、オンとオフで切り替えて集中する姿を目の当たりにし、「練習に対する意識の高さ。自分なりの理論を確立させなくてはいけないと感じました」。帰静後には、すぐに練習に取り組み、後輩や同期を背中で引っ張った。また代表の緊迫した空気を体感したからこそ、のびのび楽しくプレーする常葉大菊川の良さも再認識できた。

そして、奈良間と根来はこの日の試合終了後、吉田とがっちりと握手した。「お互い頑張ろう。いつか上の舞台で」と、プロでの再戦を誓い合った。奈良間と根来がけん引した常葉大菊川。世代最高の投手を相手にも、「らしさ」を貫き、爽やかに球場を後にした。【鈴木正章】