選抜高校野球大会の優勝候補、星稜(石川)がエース奥川恭伸投手(3年)の意地にかける。大会初日の23日に履正社(大阪)と激突するが、難敵を撃破すれば初の甲子園Vに視界が開ける。複数の好投手を擁するが、林和成監督(43)は大会を通じて奥川に「先発完投」を期待。連投が準決勝→決勝だけになる日程のアドバンテージを最大限に生かす。

  ◇    ◇    ◇

黒土に伝統のクリーム色が映えた。甲子園練習でマウンドから7球を投げた奥川は「投げやすかった。すごくいい状態です」と笑みを浮かべた。期待通りに仕上げてきた頼れるエースの姿に、林監督が驚きのシナリオを明かした。

「奥川が全ての試合で投げきるのがベストです」

1回戦最注目カードの履正社戦にまず全精力を注ぐ構えだが、石川県勢初の甲子園制覇への道筋も見定めている。昨春は最後の登場だったため、星稜は4日間で3試合こなした。今回は対照的に初日の登場。初戦に勝てば中4日、次は中2日。準決勝は休養日をはさんで中1日で臨める。

林監督は奥川が入学以来、細心の注意を払って、故障を未然に防いできた。球数制限が話題になる中、「金の卵」の体を誰よりも知り、故障予防の意識が高い林監督も無理を強いるつもりはない。慎重に体の様子を見極めながらGOサインを出すつもりだ。

奥川は「冬のトレーニングが効いている」と仕上がりに自信を持つ。体力、肩のスタミナにはプロのスカウトも太鼓判。力投型ではなく、試合の中で力の加減もできる。もちろん大量点差をつけて温存するのがベスト。指揮官は、甲子園経験のある左腕の寺沢孝多(3年)ら控え投手の起用法にも頭を巡らしているが、奥川の意地にチームの命運を託す。【柏原誠】