春季近畿大会決勝が2日、奈良県橿原市の佐藤薬品スタジアムで行われ、近江(滋賀)が神戸国際大付(兵庫)を延長戦で下し、16年ぶりに優勝した。

U18日本代表候補の林優樹投手(3年)が延長11回を投げ、16安打5失点で完投勝利した。

エースが貫禄を見せた。初回、先制した直後に2点を奪われたが、以降は得意のチェンジアップを駆使。4回には三者連続三振を奪うなど6回まで無失点。延長戦となったが「自分で投げきろうと思っていた。粘りの投球ができた」。終盤は打たせて取る投球で、150球を一人投げ抜いた。

2度志願して上がったマウンドだった。1度目は決勝前夜。多賀章仁監督(59)に「自分から投げたいと言った」と直談判。前日の準決勝は9回を128球で完投。2試合連続の登板に「体自体は重かった」と疲労はぬぐえなかった。だが、「新チームは自分が頭から最後まで投げないといけない」。9回まで114球を投げ13被安打も「一人で投げきります」。エースとしての決意だった。

3点を勝ち越した後の11回裏、2死満塁で「1番打たせたくない相手だった」という高校通算48発の3番柴野琉生外野手(3年)を二飛に打ち取ると大きくガッツポーズ。「最後は気持ちの勝負と言い聞かせました」。誰にも譲らない。1番を背負うプライドを最後まで貫いた。

忘れられない言葉がある。昨夏の甲子園準々決勝で金足農業に2ランスクイズでサヨナラ負けを喫してから、数日後だった。新チームが発足し、監督室に呼ばれた。多賀監督から「目配り、気配り、心配りが大切」。「今でも覚えています」と林は言う。指揮官は「(あの試合は)回りを見られていなかった」と成長を促した。

この春、林は1年生を指導する「1年生係」に任命された。レギュラー選手は選ばれないことが多い役目だが「面倒を見ることで成長できる。1年生に感じたことを教えないと、部のためにも自分のためにもならない」。後輩の指導を通じて視野の広さ、冷静さも身につけたことは、投球面での成長につながった。

多賀監督も「林の粘投につきます。1番の自覚、責任感が生まれた。林は1年生にとったら雲の上の存在。野球のことを伝えてくれるので助かっている。人としての成長につながっている」と目を細めた。

「夏は滋賀県の高校が打倒近江で来る。挑戦者の気持ちで1戦1戦やっていきたい」。成長したエースは集大成の夏に向け、気を引き締め直した。