星稜(石川)が逆転で北信越の頂点に立った。春の北信越はV4。昨春から3季連続優勝を達成した。

ドラフト1位候補の奥川恭伸投手(3年)が「完全復活」を告げる7安打1失点、11奪三振で完投した。エースの真骨頂が詰まった試合だった。

0-0の4回、相手の4番、木下元秀外野手(3年)に左中間を割られる三塁打で1点先制を許した。フォークのすっぽ抜け。投げた瞬間、打球の行方も見ずに捕手の山瀬慎之助(3年)に「ごめん」と謝るほどの失投だった。

木下は前日からメディアを通じて初対戦を熱望。星稜バッテリーは左の好打者を意識していたという。初対戦でいきなり痛打された奥川は「悔しかった。次は絶対に抑えてやる。倍にして返してやろうと思った」と半沢直樹ばりのリベンジを決意。この熱い気持ちが試合の肝になった。

6回2死三塁で再び打席に木下。今度は3球全て直球勝負。「直球に合っていなかった」と外角に集めて空振り三振。4番への仕返しを果たす気迫の投球で、流れは変わった。

直後の攻撃で一挙3点の逆転劇が生まれた。先頭の奥川自らが「前の回に4番を3球でしとめていたので、絶対出塁しようと思った」と左前打で出塁。無死満塁から有松和輝外野手(3年)が左翼越えに走者一掃の二塁打を放った。左翼の木下はライナー性の打球をグラブに当てたが後ろにそらした。両軍の全得点に奥川と木下が絡んでいた。

奥川は8回1死から怒濤(どとう)の5者連続三振で試合を締めくくった。8回2死で木下と4度目の対戦。この日初の150キロを2度計測。最後はスライダーで腰砕けにした。「ギアを入れました」と本気の勝負で「倍返し」に成功。試合後、木下から「すごいな」と言われ「ありがとう」と返した。「こっちから見てもすごい打者だったので」と対戦を振り返った。

センバツ後の4月に右肩の軽い張りを訴え、投球を控えていた。実戦復帰は5月下旬。約2カ月ぶりの公式戦だった1日の北信越大会1回戦では砺波工(富山)相手に6回無失点と好投した。完投はセンバツ以来。「行けるところまでと言われていたけど、投げていて最後まで行けるかなと思った。完全に復活できたかな」と笑みを浮かべた。

最後の夏まで1カ月。この日の投球を「まだまだできると思うし、もっとやらないといけないというのも込めて、60点」と厳しめに自己採点した右腕。「うれしいのは今日だけ。全員が明日から切り替えてやらないといけない。もっともっとレベルアップしたい」と表情を引き締めた。