室蘭、十勝、空知、旭川、釧根の5地区で代表決定戦が行われ、室蘭地区は鵡川が室蘭栄を6-3で下し、09年以来10年ぶり6度目の南北海道大会進出を決めた。

昨年9月の北海道胆振東部地震で選手寮が被災。その後は昨秋、今春と地区敗退しており、震災後初の道大会出場となった。

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震災から9カ月、ついに鵡川が円山切符をつかみとった。道大会進出は17年春以来7季ぶり。夏に限れば10年ぶりの南大会出場に、鬼海将一監督(35)は「10年もたっていたとは。ここまで勝ってきた相手の思いも背負って、道大会でも1戦必勝の気持ちで、ウチらしい野球を見せたい」と気を引き締めた。17年秋に就任した同監督にとっても、初の道大会進出となった。

攻撃のスイッチを入れたのは、身長159センチと小柄な主将の内海陸右翼手(3年)だ。3点ビハインドの3回先頭で、右中間を抜けるランニング本塁打を放った。「ここで何とか出塁して流れを変えてやろうと思った」。帽子のサイズは54センチ。頭が小さく、Sサイズのヘルメットでも大きいため、帽子の上にヘルメットをかぶり激走。途中でヘルメットだけが脱げて、最後は帽子姿で生還した。鵡川のモットー「全力疾走」を体現したリーダーの人生1号をきっかけに、5安打で一挙5点を挙げた。

震災直後の昨秋は地区初戦で敗退。その翌日、むかわ町の職員として復興作業に従事していた鬼海監督に、「僕たちにも何かやらせてください」とボランティア活動を申し出たのも同主将だった。鬼海監督は「あの一言が今につながった。選手が成長するスタートになった」と振り返る。練習時間を割いて、困っている人のために働く。自己犠牲の精神を体現するきっかけをつくった主将が、試合でも、チームを大きく動かす一打を放った。

前夜、仮設寮の食堂で流れていたテレビ番組に、元横綱貴乃花光司氏が出演していた。あるメッセージに鬼海監督は「ウチにぴったりと思って、借りました」。この日のミーティングで、こう伝えた。「勝つことを目指すのではなく、やってきたことをやろうよ」。地震から学んだ経験や思いも力にして、進撃を続けていく。【永野高輔】