県下屈指の進学校、水戸一が4番打者、黒崎宗矩(むねのり)右翼手(3年)のセンターバックスクリーン直撃2ランなどで優位に試合を進め、エースの片根崇行投手(3年)が、相手打線を完封。投打の歯車がかみあっての初戦突破となった。

0-0の3回表、水戸一は2死から古谷(こや)崇晃捕手(2年)が四球出塁。ここで右打席の黒崎が、相手エース左腕の来住野(きすの)晴親投手の初球をコンパクトにたたいた。定石通りの四球のあとの初球。打球はセンターバックスクリーンに飛び込む先制2ラン。

実は、「名誉挽回」の1発だった。黒崎は昨秋に4番か5番の中軸を任されていたが、打撃不振で春季リーグでは8番に降格させられていた。「久しぶり、という感じで燃えていた」(黒崎)ものの、第1打席で大振りして空振りの末、見逃し三振に倒れていた。コンパクトなスイングに切り替えたのは、それがあったからだった。

「打ったのは高めの真っすぐでした。打った瞬間、感触はよかったけど、フェンスに当たったかも、と思った」。二塁までは懸命に走り、二塁を回ったところで審判が手を回しているのを見て、安堵(あんど)の表情を浮かべた。

好きな野球選手に、米大リーグ、エンゼルス大谷翔平のチームメート、トラウトを挙げる。「パワーもあるし、テクニックもある」と、その打撃フォームも少しまねている。そんな主砲の公式戦7本目のアーチは文字通りどでかい一撃となった。

主砲の1発に呼応するように、エースの片根は、最速130キロ台後半のストレートに、70キロ台のスローカーブ、120キロ台のスライダー、110キロ台のチェンジアップを駆使して、相手打線を完封した。片根にとってはうれしい公式戦初勝利、初完封だった。「もう、うれしいです。きっちり間をとって投げたのがよかった。出来はあまりよくなかったけど、それは次の試合までに修正します」と言った。

竹内達郎監督(45)は、会心の笑みをもらした。「(黒崎を)夏の大会から4番に戻すことは決めていた。ちょっとしたカンフル剤でした。第1打席のオーバースイングをよく修正してくれた。片根も出来は70点ですが、辛抱強く投げてくれた」。1954年(昭29)夏以来、甲子園が縁遠い水戸一だが、投打がかみあっての初戦突破は、次戦(13日、対水戸葵陵)に期待を抱かせた。