2年連続の甲子園出場を狙う愛工大名電(愛知)にスーパー1年生が現れた。背番号1の左腕、田村俊介投手が、春県王者の中部大第一を9回8安打2失点に抑え、10三振を奪って完投勝利。西武、巨人などで通算224勝を挙げた工藤公康らを輩出した名門に頼もしいルーキーがいる。

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159球を投げ抜いた田村が、野球小僧らしい会心の笑顔を見せた。

「(夏は)全然雰囲気が違った。緊張したけど先輩方が『いつもの調子で』と言ってくれた。制球を意識しようと思っていました。0点で抑えたかったので2失点は悔しいです」

15歳は粘り強かった。1点先制された4回はなお続く1死二、三塁をしのいだ。6回は失策で1点失ったが崩れなかった。初めてリードした9回も2死一、三塁を抑えた。疲れていても制球は乱さなかった。

1年生で背番号1をもらった夏の初登板。2日も雨で順延された大一番に、調整は「難しかった」。本調子ではなくとも丁寧さと攻めの気持ちを心がけた。最速は自己記録に4キロ及ばない136キロ。それでも2回から3回にかけて4連続を含む10奪三振と要所で制球を間違わなかった。9回完投は練習試合を含めても初めて。その投球術に倉野光生監督(60)は「安定感、リズムがある。スピードを抑えて制球を重視できるテクニックがある」と舌を巻いた。

同監督は「本当は5番を打たせたい。盗塁も期待している。3刀流を目指せ」とハッパを掛ける。9番打者として「決勝点」を呼び込んだ。9回、杉山弘将内野手(3年)の2点中前打で同点。その後の無死一、二塁から田村の打球は二塁前への併殺コース。必死に走り、一塁に頭から飛び込んだ。併殺狙いの遊撃手が一塁に悪送球する間に1点が入った。「気持ちが出ました」。泥だらけのユニホームがヒーローの証しだった。【柏原誠】