兵庫大会ではセンバツ4強の明石商が完封負け寸前から逆転し、3季連続の甲子園切符をつかんだ。不調が長引いたエース中森俊介投手(2年)が自己最速149キロの全力投球。

足がつりながら9回を投げきり、強打の神戸国際大付を1点に抑えた。

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3季連続甲子園を目前に、最大のピンチが訪れた。9回2死満塁。中森は力いっぱい腕を振った。左打者に直球で押した。「最後は気持ちでした」。一塁線上に力なく上がった飛球を走って自らつかむと、笑顔で小躍りした。

センバツ4強で名を売ったが、その反動に苦しんだ。「まずセンバツの調子に戻せるように、と思っていたんですが…」。右肘に痛みが走り、痛み止めを飲んだこともある。夏に万全で臨めるか微妙な状況だった。普段は冷静だが、不安が表情に出ることもあった。

大会中は先輩たちに支えられた。杉戸理斗投手(3年)は今大会で1本立ちし、準決勝に完投。雨天順延の影響もあり、中3日で中森を決勝マウンドに送り出せた。投手練習をしてきた4番の安藤碧外野手(3年)まで登板。「決勝戦に先発させていただいた。気持ちを込めて投げました」。序盤から自己最速を1キロ更新する149キロを複数回計測。周囲の期待に応えた。

1点を追う9回には3年生たちから逆転の4点をプレゼントされた。水上桂捕手の同点右前打、重宮涼主将の決勝スクイズ、安藤の右越え2点打。実はスクイズの際に本塁に生還した中森に異変が起きていた。急に右足がつり始めた。それでも9回裏を投げ抜いた。センバツ準決勝以来の完投だった。

狭間善徳監督(55)は「(相手の)国際には辛抱しないと勝てない。よく投げた」とエースの気力をたたえた。中森は「監督さんに牛乳を飲めば足がつらないと言われて、毎日1本必ず飲んでいたんですが、つりました」と報道陣を笑わせた。甲子園デビューした1年夏、全国級の力を示した今年のセンバツ。3度目の甲子園はもちろん、主役候補として乗り込む。【柏原誠】