津田学園(三重)の4番前川夏輝三塁手(3年)が「兄」の貫禄を見せた。3回表の2打席目に三遊間突破の甲子園初安打を記録し、貴重な3点目のつなぎ役になった。7回には得点にこそ絡まなかったが、左中間突破の二塁打を放った。

「勝ってホッとしました。1本出てうれしいです」。2歳下の弟右京が智弁学園の1年生4番。兄弟が「違う学校の4番」として甲子園に同時出場するのは、極めて珍しい。組み合わせ抽選会前、弟に「俺が先にヒット打つわ」と“挑戦状”をたたきつけられ、自分の出番の方が早いことが決まると「俺が先に勝っておくわ」とやり返し、結果を出した。

仲はいい。今も年末年始、実家でともに過ごせば“合同練習”をする。元日の午前6時から一緒に素振りをして始動。昼間は別行動で、夜9時からまた一緒に練習する。「弟は小さい頃からすごかった。球をとらえるのがうまくて、三振しない。負けん気もアイツの方が上」とたたえつつ「でも、負けたくないです。すごいと思っても、悔しいですからね」。夢は今大会の“兄弟4番対決”だ。「親はどっち応援しますかね? 困るでしょうね。でも、親孝行ですよね」。チームのために、前川家のために、前川のバットがうなる。