令和最初の甲子園で新たな剛腕伝説が生まれた。星稜(石川)が智弁和歌山との優勝候補対決を延長14回タイブレークの末に制した。

今秋のドラフト会議で1位指名が確実な奥川恭伸投手(3年)が14回を1失点(自責0)で完投。足をつりながらも154キロを連発して165球を投げ抜き、江川卓(作新学院)に並ぶ歴代2位の23三振を奪った。星稜は24年ぶりの8強進出。連投となる18日の準々決勝での起用も注目される。

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甲子園で“奥川賛歌”が相次いだ。テレビ中継でゲスト解説を務めた星稜の山下智茂名誉監督(74)は「調子が悪くて心配だったのに…失投は1、2球。『こいつ、本当に人間なんかな?』と思った」と驚いた。ともに解説した智弁和歌山の高嶋仁名誉監督(73)も「甘い球がない。完璧。3安打じゃ勝てません」と脱帽だった。

星稜の林和成監督(44)は「僕が見た中でベストピッチ。末恐ろしい。相手によって(強いほど)牙をむく。延長に入ってコーナーに150キロ以上の球を投げていたので『もう奥川でいくしかない』と思った。ゾーンに入っているようでした」と興奮気味に語った。

プロ野球関係者もうなるしかない。現場に駆けつけた楽天の立花球団社長は「毎年甲子園に来てはいますが、ここ数年ではNO・1投手。150球投げても150キロが投げられるのはすごい」と話す。

阪神筒井スカウトは「いい意味で心と体のバランスが取れている」と大人の投球ぶりに感心。ロッテ永野チーフスカウトは「前の試合と全然違う。スライダーの精度が変わった。ものにしたと思う。強烈だった」。中日米村チーフスカウトは「彼は負けない。いい状態でも悪い状態でも勝って、総合力ではNO・1。プロに入ったら勝つことが一番重要」。ヤクルト阿部スカウトは「試合開始後の初球からチェンジアップを続けるのは今までなかった。配球も含めて考えている。勝てるピッチャーだから、そこはプラスアルファの評価になるでしょう」など高い評価が続いた。