秋田の県南地区では、増田が7回参考の継投ノーヒットノーランで初戦を突破した。先発した右腕・栗原類(2年)が5回、2番手の左腕・下島真之介(1年)が2回を無安打投球で、六郷に9-0でコールド勝ちした。

打線も藤田凜太郎捕手(2年)が初回に3点三塁打を放つなど着実に加点。秋は05年以来14年ぶりの県大会出場に王手をかけた。

   ◇   ◇   ◇

無の境地での64球だった。最速140キロの栗原が6、7割の力で脱力し、相手打線を完璧に封じた。快投劇は初回の2者連続三振で幕が開けた。その直後に四球を出したが、2回以降は5回まで3者凡退を重ねながら、打者16人で15のアウトを奪った。普段なら四球を5つぐらい出すが、この日は1四球のみと制球が安定。身長180センチの背番号1は「無安打は意識していない。考えると球がばらつくので、何も考えずにミット目がけて思いっきり投げた。6回以降も投げたかった」と笑顔だった。

スライダーとのコンビネーションでカウントを整え、6奪三振のほとんどは速球で仕留めた。「伸びのある直球で高めを振らせるのが投球スタイル」。女房役の藤田捕手は「初回から(栗原の)調子がいいのが分かった。全力で投げると球が浮くので、抑えて投げさせることを意識した」と振り返った。

栗原は小3から野球を始め、主に内野を守っていたが中1で捕手に転向。さらに、どのポジションも手堅くこなせることを評価され、監督の勧めで中2時に投手へ転身した。高校入学時は最速128キロだったが昨冬、金足農・吉田輝星投手(現日本ハム)を参考にダンベルを持ちながら片足を前に出してしゃがむトレーニングに着手。下半身を徹底的に鍛えると球速12キロアップに成功した。モデルの栗原類と同姓同名で、病院に行くと名前を書くときに「タレントさんと同じですね」と受付で声をかけられる。また診察の際に名前を呼ばれると周りの視線を感じることもしばしばだ。

増田は今夏も1回戦で敗退するなど公式戦4連敗中だったが、栗原の力投と打線がかみ合い、1年ぶりの勝利をつかんだ。3日は大曲農と県切符を懸けて対戦する。県大会は17年春に出場したが、秋は05年が最後。新星右腕がチームを久しぶりのステージへと導く。【山田愛斗】