世代屈指の右腕、明石商(兵庫)・中森俊介投手(2年)が1発に泣いた。ベスト8で敗れてセンバツ当確ランプをともすことができなかった。

3-0の3回に悪夢が待っていた。2死一、二塁からプロ注目の右打者、西野力矢内野手(2年)に逆方向の右翼席に同点3ランを運ばれた。2ボールからの3球目は外角高めに浮いた直球だったが、豪快にとらえられた。「見逃せばボールという球だったけど、打たれてしまった」。衝撃の一打だったが、それ以前に2死走者なしから死球、安打で走者を出したのも中森らしくなかった。

今年の春夏甲子園で連続ベスト4。最速151キロを誇る注目右腕だ。だが夏以降にフォームを崩した。本調子を取り戻せないまま秋季大会に入った。突貫工事で、狭間善徳監督(55)と毎日ビデオをチェック。前夜も指揮官が自ら電話をかけて「もう1度見ておけ」と指示したほど。完成度の高さを誇る中森にとっては重症だった。

ただ、同監督は「あいつの経験値でしょうね」と責めなかった。完全とまではいかないがフォーム修正に成功した。西野に打たれた1本以外は中森らしさを示した。「多少バラつきはあったけど、ある程度いい球がいっていたと思う」と本人も振り返った。

決勝点は3-3の6回、暴投によるもの。捕手はチーム事情によって新チームから捕手に戻った名村康太郎(2年)。監督が認める努力家だが、準備期間1カ月ほど。ワンバウンドの鋭い変化球を後逸するのも無理はなかった。

激闘を終えた中森は「9回まで1球も気を緩められなかった。この冬は自分からしんどいことをしたりして、みんなに姿勢を見せていきたい」と、闘志を新たにしていた。