高校野球秋季関東大会は高崎健康福祉大高崎(群馬3位)の初優勝で幕を閉じた。

今秋からユニホーム胸のロゴを「健大高崎」から、かつての「KENDAI」に変更。「接戦で負けたり、決勝で負けたり。何か見える形で変えたかった」という青柳博文監督(47)の思いが、さっそく良い流れを呼び込んだ。

関東大会全14試合中9試合を取材した。高崎健康福祉大高崎は、最も投打がかみ合っていた。チーム防御率は、8強進出校では花咲徳栄(埼玉)の1・20に次いで2位の1・75。決勝こそ登板しなかったが、182センチ左腕の下慎之介投手(2年)の好投が光った。角度ある直球とカーブを丁寧に低めに集め、2戦連続2桁得点していた東海大相模(神奈川)を6安打に封じた準決勝がハイライトだ。

準Vの山梨学院(山梨)の左腕・吉川大投手(2年)も同タイプ。181センチから淡々と低めをつき、準々決勝では同じく強打に定評があった花咲徳栄に8安打を許しながら、1点に抑えた。下も吉川も「とにかく低めに集めることだけを考えました」と話していた。

ある出場校の関係者が分析する。「東海大相模も花咲徳栄も、低めへの緩急に体重移動がうまくいかなかった印象です」。それが力ない内野ゴロやポップフライにつながったと指摘。「夏の甲子園に出場して、新チームが練習試合不足で秋に臨むと、よくあるパターンです」と続けた。

「秋は左腕が有利」という言葉があるが、今大会は極端だった。決勝進出の両エースだけでなく、8強進出校全てのエースが左腕だった。これだけそろうのも珍しい。8人とも快速球とウイニングショットで奪三振ショーを繰り広げるタイプではなく、コーナーワークが生命線。彼らが我慢しているうちに集中打が出たチームが勝ち上がった-。そんな印象の大会となった。

8人の多くが冬の課題として「球速アップです」と明確に口にした。投手は球速が全てではないものの、例えば近畿大会の「智弁対決」智弁学園-智弁和歌山戦が17-13の打撃戦になったように、高校生の打撃レベルは年々上がっているように感じる。ひと冬越えればなおさらだろう。

それは投手も同じこと。8人の中にも、甲子園で見違えるような快速球を投げる左腕が現れるかもしれない。ひそかに楽しみにしておきたい。【金子真仁】