日本高野連は13日、来春のセンバツ「21世紀枠」の地区候補9校を発表した。

東北から選出の磐城(福島)は県内屈指の進学校でもあり、12年ぶりに出場した東北大会では2勝を挙げ8強。大会中に襲われた台風19号の影響も乗り越えた。大会後は地元で復旧ボランティア活動を行うなど、社会貢献にも励んできた。

71年(昭46)夏に全国準優勝。春夏合わせ9度の甲子園出場を誇る古豪が、95年夏以来25年ぶりとなる甲子園出場に1歩前進した。出場3校は来月24日に決定する。

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夢の舞台に1歩近づいても、はしゃぐ選手はいなかった。練習前の円陣で木村保監督(49)から「まだまだな、あの聖地に立つ資格はないと思います。今日の練習も大事です」と声を掛けられると、磐城の19人は元気よくグラウンドに飛び出していった。

苦難を乗り越えてこの日を迎えた。10月11日に花巻で行われた東北大会1回戦で東海大山形(山形)に完封勝ちし、いわき市に戻った。しかし、翌日に台風19号が直撃。部員宅に大きな被害はなかったが、交通機関が分断された。試合前日の13日午後1時に再集合も、岩手に向かうバスの窓から見えた光景に選手たちは言葉を失った。木村監督は「今、この地域のために微力ながら何ができるのか。少しでも勇気や元気を与えられるよう野球を頑張るしかない」と鼓舞した。

宿舎到着は夜8時。ほぼぶっつけ本番で2回戦に臨み、勝利をつかんだ。準々決勝で力尽きたが、大会から戻るとすぐに全員でボランティアに出向き、泥のかき出しや、家財の運び出しなどを手伝った。つらい状況にもかかわらず「東北大会頑張ったね」と声をかけられ「地域の方々に支えられていることを再認識した」と岩間涼星主将(2年)は決意を新たにした。

運命の発表まで41日、同主将は「今までは甲子園に行ければいいなという甘い考えだったけど、地域の皆さんのためにも絶対に勝たなければいけないという思いも芽生えてきた。ただ行くだけじゃなく、行って勝ってこそ意味があると思っている」と万全の備えで吉報を待つ。【野上伸悟】