磐城(福島)で30日、野球部の木村保監督(49)らの離任式が行われた。

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木村監督は泣かないはずだった。でも我慢の限界だった。ノック最後の1巡では、19人の全選手から、感謝の言葉が振り絞られた。

「先生、今までありがとうございました。夏は絶対に甲子園に行きます!」。ラスト1球、高く上がった捕邪飛は、本塁1メートル後方で岩間涼星主将(2年)のミットに収まった。「彼らから力を与えられた。あの子たちの声を聞いたり、姿を見ると…」と感極まった。

センバツは46年ぶり、甲子園は95年夏以来の「はず」だった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、11日に中止が決定された。直後に福島商への転任が決定。前日29日に、甲子園用に新調したユニホームを1人1人に、激励の言葉とともに手渡した。登録メンバーに1人だけ外れた菅波陸哉内野手(2年)に19番を、遠藤百恵マネジャー(2年)にも同じものを授けた。20人で夏に向かうための最後のノックだった。

木村監督だけではなく、大場敬介部長(30)が千葉県に転任、阿部武彦校長(60)は定年で学校を去る。3人ともOBで、阿部校長は入部直後のけがで、退部をよぎなくされた。大場部長は母校での指導を夢見て教師の道を選んだ。岩間主将は「保先生、大場部長、校長先生の思いを背負って絶対に夏、甲子園をつかみとりたい」と誓った。

木村監督は今後、県高野連の事務局員としてサポートを続ける。「あいつら下を向いていないなと頼もしく思った。すごくこれからが楽しみ。私は陰ながら見守っていきたい」と、最後の教え子たちを見つめた。【野上伸悟】