新型コロナウイルス感染拡大に伴い、議論が起きている9月入学制。導入されれば、夏に選手権大会を行う高校野球も大きな影響を受けるのは間違いない。関東圏の公立校野球部を率いる男性顧問が、指導者として、また教師として、胸中を明かした。

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9月から新学年となれば、7月(北海道、沖縄は6月)に始まる都道府県大会、さらに夏の甲子園は、どうなるのか。日程が変更されない限り、受験期間と重なる可能性が高い。同顧問は「全てのスポーツが(議論の)土俵にない。夏の高校野球は(政治家の)前提にないのでしょう」と冷静に切り出した。その上で「3年生が引っ張っていく学校と、1、2年生で臨む学校に分かれる。各チーム任せになる」と予想した。強豪校は3年生が残り、進学校は引退。そんなケースが増えるかもしれない。

力の差が広がりかねないが、同顧問は指導者の責務に触れた。「世の中のシステムが変われば、不利益も出る。そこは現場がやるしかないのかな。苦労は増える。でも、生徒に区切りをつけられるのは指導者しかいません」と強調した。

9月入学制は議論が始まったばかりだが、「区切り」は今まさに直面する問題でもある。インターハイが中止となり「当然、野球だけいいのかという意見は出る。(選手権は)厳しいかな」と覚悟する。「野球ありきの社会ではない。野球がこの先、10年、100年と生き残るには、野球だけという考えをしていたら、野球そのものをなくしてしまう」。もちろん、今の3年生を思い「6月ぐらいに活動を再開できれば」と願う。ただ、大局からも現実を受け止めている。

教壇にも立つ身。今年の新学年が9月に延びれば現状、オンライン授業が充実する私学との格差縮小を期待する。ただ「9月まで、ずっと休みというわけには。現場の負担は変わらない」とも言った。未曽有の事態。指導者としても、先生としても、苦悩している。【古川真弥】