なぜか、甲子園球児がよく生まれる市区町村がある-。膨大なデータから、全国1896自治体の“輩出指数”が明らかになった。「過去25年の夏の甲子園出場約2万1000人の出身市区町村と、その考察」と題し、連載で47都道府県を完全公開する。第1回は東京都。野球少年がぎっしり詰まった23区内外で、意外な偏りがあった。夏の風物詩に思いをはせて、ふるさとの軌跡をお楽しみ下さい!【調査・分析=金子真仁】

  ◇    ◇    ◇

誰にでも故郷がある。甲子園でも地元代表校はつい応援してしまう。活躍する球児が同じ生まれと知れば、なおさらだ。星稜・奥川恭伸投手(現ヤクルト)には石川・かほく市民が、金足農・吉田輝星投手(現日本ハム)には秋田・潟上市民が、より応援に熱を入れたことだろう。

25年間で、のべ約2万1000人。夏の甲子園球児たちの故郷を、出身中学をもとに全て集計した。出場条件が比較的均質な夏の大会に限定。全国1896区市町村それぞれからの輩出人数と、独自の計算式で確率を算出した「輩出指数」を公開する。

都道府県ごとに短い考察を添えた。細かな解析や想像は皆さまに任せたい。数値が高い自治体は、地域全体での野球熱が高いのか。有名指導者がいるのか。食文化が影響しているのか。それとも“たまたま”なのか。

「0」の自治体もある。それが半年後に「10」になる可能性もあるのが甲子園だ。今も球児それぞれが「1」に向かい、全国津々浦々で思いを募らせる。膨大なデータを構成する膨大な「1」へ敬意を表しつつ、連載の旅を進めたい。

そして-。

いつもとは違う春が過ぎた。気軽に帰れない故郷。懐かしい景色、におい。普段は無機質な活字や数字からも、郷土のぬくもりが少しでも伝わればと思う。

 

<計算方法と注釈>

◆対象 95~19年の25年間の夏の甲子園出場者。人数表記は「のべ」。

◆方法 球児が各媒体に公開した「出身中学」の在籍自治体で分類。今回の企画の趣旨上、「地元」がより明確になる公立中のみを市区町村で分類し、国立・私立中出身者は参考数として合計人数を掲載した。

◆人口 総務省発表の「平成31年度住民基本台帳に基づく人口」。

◆輩出指数 「各自治体の輩出数」を「15~19歳男子人口×25年×0・6(15歳と19歳を除くため)」で割り、10万を掛けたもの。数値が高いほど、人口比での輩出率が高くなる。

 

【東京都】23区内だけでも、濃淡が出る。最多輩出は東端にある江戸川区の103人。全国1896市区町村でも13位に入る。独自算出の輩出指数でも、23区内では千代田区に次ぐ。

逆に渋谷区は2人で、目黒区も直近10年間では2人。他区も含めてのことではあるが、私立中進学などの影響も考えられる。

23区外に目を向けると、多摩地域南部にある町田市の公立中からは、37人の夏の甲子園球児が生まれた。市内の日大三と桜美林が、25年間で計12度出場した。

このエリアは全国屈指の強豪校密集地で、町田駅を中心に半径8キロの円内に東海大相模、桐光学園、桐蔭学園の神奈川勢が入る。相乗効果で中学は硬式、軟式とも強いチームが多い。一方で、サッカーが盛んな土地柄とはいえ、稲城市からの輩出が確認できなかったのは意外だった。

伊豆諸島からの甲子園球児輩出も、この25年間では0人。離島には、部員2名で奮闘を続けている中学野球部もある。

 

<東東京・西東京25年間の夏の代表校>

◆葛飾区=修徳2

◆江戸川区=関東第一5

◆江東区=城東2

◆台東区=岩倉1

◆北区=成立学園1

◆板橋区=帝京7

◆文京区=日大豊山1

◆千代田区=二松学舎大付3

◆大田区=雪谷1

◆世田谷区=国士舘1

◆杉並区=日大鶴ケ丘2、国学院久我山1

◆中野区=堀越1

◆小平市=創価2

◆国分寺市=早実4

◆町田市=日大三10、桜美林2

◆八王子市=八王子学園八王子1

◆あきる野市=東海大菅生3

※校名直後の数字は出場回数