再スタートは青空ミーティングからだった。神奈川の名門・横浜は6日、約2カ月ぶりに全員が集まった。だが、練習を始められなかった。3年生の「自分たちだけで話し合いたい」という希望を、村田浩明監督(33)は受け入れた。津田啓史主将を中心に、23人がグラウンドに座った。

「自分たちにとって大きかった甲子園がない県大会を、どういうモチベーションで戦えばいいのか?」

2時間かけても答えは出ない。「悩みました。甲子園に行くために、みんな頑張ってきた」。熊本から上京してきた主将は振り返る。ようやく7日の朝「県の代替大会が検討されている。そこで優勝しよう」と一致できた。練習前、23人みんなで村田監督に伝えた。

村田監督 横浜高校は、いろんな先輩たちが作ってきて、今がやれる。君たちは後輩に何が残せるかな?

3年生一同 やるからには1番を目指します! どんな状況でも横浜高校は強いことを見せたいです。

村田監督は4月1日に就任した。わかり合う間もなく、わずか1週間で活動休止となり「私自身、迷いました」。Zoom、LINEなどで連絡を図ったが「心と心のコミュニケーションは取れない。かける言葉をいろいろ考えましたが、実際に会って見つかるだろうと」。第一声で「お帰り」と言ったものの、3年生のダメージを目の当たりにした。「正解はない」と試行錯誤が続く。だから、3年生の自主的な行動が「うれしかった」。

多くの大人が「切り替えて」と言う。そうするしかなくても簡単ではない。それでも、津田は「コロナで家族を亡くした人の悔しさは計り知れない。僕らには、まだ野球がある」。7日は久々の実戦練習。攻守交代時、度会隆輝内野手(3年)は肘と肘でエアタッチし「日本一!」と盛り上げた。「楽しく練習した方が自分たちのためなので」。引きずったとしても当然。ただ、自分たちで「切り替えよう」と決めた。その1歩が尊い。【古川真弥】