「エール」を力に勝利をつかむ。夏季北海道高校野球十勝地区大会に出場する池田の校歌は、現在放送中のNHK連続テレビ小説「エール」のモデルとなった古関裕而氏が作曲。池田は野球部員6人に、全国高校総体リレーで日本一のスケート部から3人、弓道部から1人の助っ人を加え、10人で昨夏以来の単独チームで挑む。特別な夏に白星を挙げ、天国の偉大な作曲家に自慢の校歌を届ける。

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特別な夏。池田は単独チームでの出場にこぎつけた。主将の安達陸斗捕手(3年)は「助けてくれる仲間のためにも、しっかりチームを引っ張って、いい夏にしたい」。昨秋は部員が4人まで減少し連合チームでの出場。今春から田中海斗(3年)大西瑛介(1年)の2人が入部。大会には全国でも強豪のスケート部などから野球経験者4人の助っ人参戦も決まった。

何としても校歌を歌いたい。同校校歌はNHK連続テレビ小説「エール」のモデルになった古関裕而氏が作曲。同校創立80周年記念誌によると、当時の校長が恩師にあたる詩人、作詞家の西条八十氏に作詞を依頼。そのつながりから古関氏が作曲を手掛け、51年の高校祭で発表された。

古関氏は夏の高校野球の大会歌「栄冠は君に輝く」などで知られる名作曲家。安達主将は「歌の最後に校名が続くところが好き。勝って1回でも多く歌いたい」。スケート部の長崎向泰(3年)も「勝って校歌を歌うのは野球部ぐらい。高校最後の夏に、みんなで整列して歌ってみたい」と目を輝かせた。

“補強”は万全だ。スケート部3人のうち長崎、石岡良介(3年)は1月の全国高校スケート男子2000メートルリレーで7年ぶりに優勝。当時、負傷で出られなかった所岳澄(3年)も50メートル6秒5の俊足だ。石岡は野球でも青森・八戸下長中時代に全国軟式8強の実力者。3人とも昨夏も参戦したが初戦で広尾に惜敗し、石岡は「1年ぶりの硬式なので守備ではボールの伸びに慣れたい。打撃では速い球に差し込まれないで打てるか。何とか勝利に貢献したい」と雪辱を誓った。

昨秋は同じくNHK連続テレビ小説「なつぞら」のモデルとなった帯広農が全道4強に進出し、創立100周年でセンバツ21世紀枠に選出されていた。池田は今年102周年で、くしくもNHK連続テレビ小説も102作目。第102回の夏の甲子園はなくなってしまったが、10人の力を集結し、再び十勝から熱い風を吹かせる。【永野高輔】

◆古関裕而(こせき・ゆうじ)本名・古関勇治。1909年(明42)8月11日、福島県福島市生まれ。福島商卒。29年(昭4)に日本人として初めて国際作曲コンクールに入賞し、30年9月に日本コロムビアの専属作曲家になる。夏の甲子園大会歌「栄冠は君に輝く」、応援歌の巨人「闘魂こめて」、阪神「六甲おろし」などで知られる。「イヨマンテの夜」「君の名は」「高原列車は行く」「モスラの歌」など数々のヒット曲を生み、64年の東京五輪では行進曲「オリンピック・マーチ」を作曲。紫綬褒章、勲三等瑞宝章などを受章。89年8月18日に80歳で死去。