夏季北海道高校野球大会名寄地区の組み合わせが6月30日、代理抽選で道内10地区のトップを切って決まった。

天塩との連合で出場する3年生部員2人の名寄産は、7月18日の1回戦で稚内大谷と対戦する。昨秋以降、休部となっていたチームは主将の中屋僚太遊撃手が4月にたった1人で活動を再開。新たに昨夏も助っ人で加わった岩崎聖斗投手が加わり、親友とともに特別な夏に臨む。

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特別な夏が始まる。名寄産は連合での出場を含めて17年夏以降公式戦は未勝利。甲子園につながらない、観客もいない。稚内大谷との対戦が決まった中屋と岩崎は「試合ができてうれしいし、感謝したい。その次に楽しんで勝てたら良いな」と口をそろえる。

大会の開催は見通せず、練習すらまともにできなかったコロナ禍の4月。昨秋に部員1人になり休部という決断をした中屋は、半年間考えていた思いを三谷卓永監督(38)に伝えた。「小学校からずっと野球をやってきたし、最後までやり遂げたい」。

たった1人で臨むはずだった、夏。名寄産のユニホームに袖を通したのは2人だった。「もし大会に出るのならやりたい。野球は楽しいから」。岩崎はかつてともにプレーした仲間の誘いにうなずいた。中屋とは一緒に入部して1年夏までプレーしていた。少人数の部活動に限界を感じ退部したが、昨夏単独出場した際も助っ人7人のうちの1人として加わっていた。野球への愛は消えていなかった。「一緒にプレーする仲間が欲しかった」と中屋の思いに応え、まだ独自大会開催すら決まっていない時期に再入部した。

大会は天塩との連合での出場でも、やはり1人より2人でいられることは幸せだ。「仲はいいですけど、友だちじゃないですよ」と笑って言うが、オフには一緒にスマホ向けゲーム「ポケモンGO」で遊ぶ。キャッチボールをするには広すぎるグラウンドで2人での練習を終えると、牛丼店でご飯をかき込む。「こいつはチーズ牛丼」(中屋)「中屋はチーズカルビ」(岩崎)。互いの好きなものは知っている。学科も違えば、夢も違う。卒業後は互いに別の道に進む。2人の限られた時間、懸命に白球を追う。【浅水友輝】