五戸(青森)硬式野球部は愛校心にあふれた最後の夏に挑む。昨秋に最上級生が抜けて部員が6人に。他校と連合での参加を打診されたが、松橋心太主将(3年)は「22年3月で学校がなくなってしまう。だからこそ単独で最後まで出たかった」。部員同士で話しあって秋季大会出場辞退を決断し、春、夏にかけていた。

同校は来年度で閉校。今春の新入生はいない。「学校内で野球をやってくれそうな人に声をかけまくりました」と部員勧誘に奔走。2学年で生徒数約100人中、男子は約60人。「20人くらいに声をかけた」。弓道部主将と掛け持ちの崎翔一(3年)、元テニス部の小泉翔(3年)、元茶道部の大久保隆世(2年)が集い、9人がそろった。降雪時の長靴ポール間ダッシュなども乗り越えられたのは、試合出場の希望がようやく見えたからだった。大会直前には柔道部から田中尋(3年)も加わった。

春、夏の中止。県独自大会は開催されるが、最高学年での公式戦出場を果たせぬままの卒業が決まった。松橋主将は幼少期からの高校野球ファン。好内野手を数多く輩出する大阪桐蔭が大好きだった。特に楽天浅村栄斗内野手の高校時代から憧れ続け、動画で研究。「自分はすごいプレーは出来ないけれど、強いだけが高校野球ではない。堂々と、何点差つけられても粘ってみせる。テレビで甲子園を見るのも楽しみだったんですけれど…」。卒業後は大工になって家族のために木造住宅を建てる夢も抱く。高校総体の中止後、野球部に専念する崎も「中学では野球部だったので、弓道で1球1球の集中力は培ってきたので、夏は1本でもヒットを打ちたい」と目標を定めた。

県独自大会初戦は、19日の2回戦で大湊と対戦することが決まった。県大会での勝利となれば、14年夏以来。3人の2年生が秋以降に単独出場するには最低6人の助っ人獲得が必要。ラストイヤーも単独出場するためにも、まずは1勝。五戸野球部の魅力を伝える夏にする。【鎌田直秀】