昨夏王者・日本文理の夏“連覇”はならなかった。5投手が19安打を浴びた。大会途中から控えに回った主将の平野貴史捕手(3年)は6回から出場。誰よりも勝利にこだわった主将の高校野球が終わった。敗戦のショックを隠しきれない。平野は絞り出すように言った。「チーム一丸になって戦い抜こうとしたけど…」。

6回表、先発マスクの千島広大捕手(3年)の代打で出場。その後、最後までマスクをかぶった。背番号2をつけながら、今大会は3回戦の新潟江南戦から千島の控えに。それでも「勝つためにできることをやる」と悔しさをしまい込んだ。試合中はブルペンで投手陣の準備を仕切り、ベンチを盛り上げた。千島とは試合ごとに配球を話し合った。

前日5日、決勝のベンチ入りメンバー20人を決める時、鈴木崇監督(39)に「勝つためのメンバー」(平野)の選考を願い出た。「思い出づくりの試合ではない。優勝を目指しているので」。自身のスタメン落ちは覚悟の上。勝利がすべてだった。

鈴木監督は「平野には、まだ『ごくろうさま』とは言わない。新チームのためにしてもらいたいことがある」。平野は今後も練習に参加する。「後輩たちに日本文理の野球を伝えたい」。最後の夏を終え、「文理魂」の伝達が待っている。【斎藤慎一郎】