創成館(長崎)が4番猿渡颯(はやて)外野手(3年)の三塁打などで勝利。センバツ中止の悔しさを乗り越え錦を飾った。

1点リードの7回。先頭打者・猿渡が高めの直球を振り抜いた。右中間に飛んだ打球はフェンス際へ。全力疾走で三塁を踏んだ主砲は右腕を高く突き上げた。「思わず(ガッツポーズ)です。あまり点がとれてなかったので、自分も4番に座らせてもらっているので、なんとかしないといけないと思った」と犠飛で生還し喜びを爆発させた。

センバツ中止が発表された直後、部員は泣き崩れた。それを救ったのは地域住民の応援の声だった。下を向いていた選手も夏を目指し再起。学校の看板には奥田修史校長(48)が「春の忘れ物は 夏、取りに行きます」と掲げ選手の背中を押した。奥田校長は「さまざまな方から心配の声をいただいた。元の選手の姿を取り戻すために掲げました」と明かした。猿渡も「夏も中止になったが、交流試合をさせてくれるということで、がんばろうという気持ちになりました」と語った。

長崎の独自大会は2回戦で敗退。優勝したのは初県王者となった大崎だった。この日、奥田校長は大崎のワッペンを胸に着けて観戦。「本来なら夏のチャンピオンが出る大会。大崎高校の気持ちを何としても連れて行きたかった」とその理由を明かした。人気俳優の岡田健史(21)は野球部のOB。「忙しいと思うが、岡田くんも喜んでくれてるんじゃないでしょうか」と語った。

稙田龍生(わさだ・たつお)監督(56)は「センバツの中止の時はどう声をかけていいのかわからなかった。よく乗り越えてくれた。今日は気迫が伝わってきた」と選手をねぎらった。【南谷竜則】