父の仕事場だった甲子園で、ジュニアが躍動した。元阪神関本賢太郎氏(41)の長男で、履正社(大阪)の主将、勇輔捕手(3年)が、星稜(石川)が仕掛けた二盗を3度阻止。打っても4番で5打数2安打1打点。昨夏決勝の相手に圧勝した。父と同じ高卒でのプロ入りを希望し、縁があれば「2代目阪神関本」が誕生する可能性もある。昨夏全国王者は大阪、交流試合と無敗で20年の夏を終えた。

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やっぱり甲子園には、縁があるのかもしれない。1度はなくなった夏、再びたどり着いた甲子園で戦った相手は、初優勝した昨夏の決勝と同じ星稜。関本は「甲子園に出た以上は倒す相手だと思うので(勝って)素直に安心した。先輩たちが戦った相手で強い思いはありました」。最後の夏をやり切った表情で締めた。

打撃不振に苦しんだ大阪の夏が遠い昔のように、関本は躍動した。聖地は父で元阪神関本賢太郎氏の元仕事場。父は「全力でやってくれ」と送り出してくれた。「今まで野球をやらせてもらっていたことに対する感謝の気持ちを、プレーで恩返しできたらいいなと思っていました」。主将は攻守で主役になった。

2回、初球のスライダーを捉え、追加点をたたき出した。新チームから4番に座る。打てず、府の独自大会で4番を外れたこともあったが、この日は5打数2安打1打点。スタンドから祈るように見つめた父は「僕の想像していた以上の結果を残してくれました。ホッとしましたし、感慨深いものがありました。ようやった! と言ってあげたい」と感無量だった。

守っても2回、捕邪飛を追いかけてバックネットを恐れずに飛び込み、好捕。5、6、7回には、正確な送球で星稜の二盗を阻止。交流試合前は送球をひっかけるなど不安定だったが「甲子園では、まわりを見て投手を引っ張るんだと。落ち着いて投手とゲームを作れた」。二塁送球最速1秒84の強肩でエース岩崎をもり立てた。岡田龍生監督(59)は「大阪大会では全然ダメだったが、いいところで刺してくれた」。甲子園で、水を得た魚になった。

6月中旬にプロ志望を明らかにした。「感謝の気持ちを前面に出してプレーできた。野球を続けていこうと思っているので、また甲子園の土を踏めたら」。親子2代で甲子園を本拠にする夢が開けるかもしれない。この夏が終わっても、聖地の物語は続けるつもりだ。【望月千草】

◆関本賢太郎氏の甲子園 天理3年の96年夏、甲子園に1番打者、二塁手で出場。1回戦(対日大東北)で先制の2点適時二塁打を放ち、2回戦では新沼慎二、志田宗大らの仙台育英に敗れた。2試合通算成績は6打数1安打2打点。同年ドラフト2位で阪神入団。