桐生第一(群馬)は、明石商(兵庫)にあと1歩及ばず敗れた。

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9回無死一塁、桐生第一の広瀬智は、代打で打席に向かう背番号10、福士に声をかけた。「俺らで今まで作ってきたチームだから最後思いっきりやってこい」。対外的には広瀬智が主将だが、チーム内ではダブルキャプテンとして、引っ張ってきた。福士は「最後の打席、最後のワンプレーで声をかけてくれ、心強かったです」。つなぐ意識で打席に入り、死球をもぎ取った。「いい粘りを少しは見せられました」とホッとした表情を見せた。

親分肌の広瀬智と、実直で内に熱いものを持つ福士。性格が正反対だからこそ、足りないものを補い合えた。2人で3死球は偶然の一致だが、二人三脚でまとめ、全員野球のチームを作り上げた。

プロ注目の明石商・中森を相手に敗れたが、真っ向勝負で戦い抜いた。試合後「ありがとう」と握手。一言にさまざまな思いが詰まっていた。広瀬智は「みんなのこのチームのキャプテンをやれて幸せでした」と振り返る。試合後には福士は涙をためた。2人で全力で駆け抜けた1年間。誇りに思いながら甲子園を後にした。【湯本勝大】

▽桐生第一・今泉監督「3年生が最後の大会で思い切ってやってくれた。選手がここまで連れてきてくれた。ありがとうと伝えたい」

▽桐生第一・川端(9回に中前適時打)「ずっと打席に立ちたいと思っていた。打てたのは秋からファーストストライクを徹底して振ってきたからだと思う」

▽桐生第一・星野(7回に適時打)「仲間が回してくれたので、思い切り振っていこうと思った。中森君は低めの球が伸びてくるし、真っすぐの軌道で落ちる。NO・1投手だと感じた」