高校野球の球数制限を深掘りする。23日に組み合わせ抽選会が行われた第93回選抜高校野球大会(3月19日開幕、甲子園)は「1週間500球」の制限が採用される初めての甲子園大会となる。本来は昨春センバツから採用予定だったが、新型コロナウイルスにより、昨年は春、夏とも大会中止。全国の舞台で、球数制限がどう作用するか。1回戦が第何日かによって、受ける影響に差が出そうだ。

「1週間500球」の球数制限は、既に地方大会では導入されている。記憶に新しいのは、昨秋東北大会。柴田の谷木(やぎ)亮太投手(2年)は、1回戦から準決勝まで4試合連続で先発した。2連投となった準決勝を120球で完投し、この時点で計481球に上った。

10月20日の仙台育英との決勝は、同14日の1回戦から数えて、ちょうど7日目。「1週間500球」の制限にかかる。残りは19球。決勝は先発せず、ここ一番のために救援待機した。4回途中から2番手で、打者6人に19球、ジャスト500球で降りた。成績は、1/3回、3安打4失点(自責1)。先発投手が9失点するなど、チームは1-18で敗れた。準優勝したのに、決勝の大敗を理由にセンバツ選出を不安視する声も起きた。結局、順当に選出されたが、もし選ばれていなければ、球数制限の是非を巡る議論が起きただろう。

東北大会は日程に余裕のある他地区と異なり、1週間で全日程を消化する。そのために起きた事態ではある。ただ、2日の休養日を含め全13日間のセンバツでも、同じことが起きる可能性がある。注意すべきは、1回戦が第何日かで、球数制限から受ける影響にかなり差が出ることだ。

もっとも過酷なのは、第5日に登場する6校に、1回戦最後の第6日第1試合に登場する2校を加えた8校。勝ち進めば、1回戦から準決勝まで1週間以内に4試合を戦う。さらに、2回戦から決勝までも6日間で4試合となる。

冒頭に挙げた柴田は、くしくも、この過酷なヤマに入ってしまった。平塚誠監督(48)は「勝ち上がったらの話だが、正直、球数制限のことは思い浮かんだ。相手は強豪校しかおらず、谷木温存は考えられない。対策は考えている段階。控え投手の状態が上がってはいるけど」と、苦笑いで打ち明けた。

「1週間4試合」の意味を考えたい。1人で投げ抜くとすれば、球数制限のため、1試合平均125球以下で終えないといけない。これが、いかに大変か。19年センバツの場合、勝利した、のべ31チームの合計球数は4209球。1試合平均136球だった。4試合だと計544球で500球を超える。つまり、平均的な球数であれば、1投手だけで勝ち上がっていくことは許されない。

日程が固まっている以上、やはり、複数投手の起用が鍵を握る。1回戦最後に登場する中京大中京は好投手・畔柳亨丞(くろやなぎ・きょうすけ)を擁するが、1人で任せるわけにはいかない。高橋源一郎監督(41)は「畔柳中心だが、他の投手もいて組織力で戦っていくチーム。問題ないと思っている」と話した。

ちなみに、第2日第1試合までに登場する8校は、1週間4試合はなく(最大3試合)、球数制限の影響は限定的といえる。続いて第4日までに登場する16校は、2回戦から決勝までが1週間4試合となるが、第5日以降の8校のように、2回直面することはない。23日に行われた組み合わせ抽選会は、相手がどこかだけでなく、1回戦が第何日かも大きな意味があった。

近年では13年センバツで準優勝した済美の安楽が全5試合に先発し、計772球を投げた。その後、肘痛に悩まされ、投げ過ぎが問題視された。球数制限は故障防止のため。大会期間の延長が難しいのであれば、複数投手の起用が進む現状は、ルール導入の狙い通りともいえる。【古川真弥】

◆球数制限 新潟県高野連が18年12月、独自に「1試合100球」を発案。これを受け、日本高野連は全国統一ルールを決めるための有識者会議を発足させた。高野連関係者、医師、弁護士の他にも、早大・小宮山監督、筑波大・川村監督、横浜・渡辺元監督、日本ソフトボール協会宇津木副会長らが加わった。会議を重ね、19年11月「1人あたり1週間500球以内」とする球数制限を盛り込んだ答申の骨子をまとめ、20年センバツからの導入が決まった。

500球に到達した打者の完了まで投球できる。降雨などでノーゲームになった試合もカウントされる。罰則は設けない。22年までの3年間を試行期間として実施する。