<高校野球春季愛知大会:愛工大名電6-1享栄>◇2日◇決勝◇岡崎市民球場

愛工大名電が攻守の歯車がかみ合い、12年ぶり11回目の春優勝だ。プロ注目の田村俊介投手(3年)と野崎健太投手(3年)の継投で享栄打線を寄せつけなかった。二刀流の田村は3回1失点&2安打と奮闘。野崎は6回無失点の好救援だった。打線では宮崎海外野手(3年)が2回に先制アーチなど3安打の活躍だ。享栄は肥田優心投手(3年)が力投も及ばなかった。

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分厚い投手力で愛知の頂点に立った。大一番を託されたのは左腕の田村だ。序盤から丁寧さが光る。球速は130キロ台後半だがカーブを駆使して緩急をつけた。1回2死後、プロ注目の彦坂藍斗外野手(3年)を低め速球で二ゴロに詰まらせた。

先制するまで点を許さない。田村は冷静だった。プロから注目され、つい肩に力が入りがちだった。「今まで球速を気にしすぎていた。球速より1人1人対戦することです」。3回1失点だったが3点リードを保った。「投手より打者に自信があります」と話すように、高校27発の打力も自慢だ。3回は先頭で中前に運び、得点に導いた。「あまりいい打球はなかった」と言うが2安打の奮闘だ。

勝利を呼んだのは、4回から登板した右腕の野崎だ。最速148キロの剛腕だがスライダーなどを多投し、敵の打ち気をそらす。「ウッ」と絶叫し、速球で空振り三振締め。ド派手なガッツポーズで仁王立ちだ。「球速は出なかったけど、ストライク先行を意識して三振より打たせて取る」。6回91球無失点で試合を作った。

徳川家康が生まれた岡崎市で、毛利元就さながらの「3本の矢」構想だ。田村、野崎だけでなく、この日は登板機会がなかった最速147キロ右腕の寺嶋大希投手(3年)は今大会の活躍でプロの評価を高めた。倉野光生監督(62)は「寺嶋と松下を投げさせず勝てたのが収穫」と話し、先を読む。「夏は1人の投手だけでは投げきれない。3分の1ずつ投げられればいい」。週500球の球数制限があり、継投策は強みになる。簡単に折れないプロ注目の3投手を柱に、全国に覇を唱える。【酒井俊作】