福島の絶対王者が帰ってきた。聖光学院が学法石川を13-7で撃破。両軍合わせて31安打の打撃戦を制し、昨秋2回戦で敗れた悔しさを晴らした。「3番中堅」で先発出場した坂本寅泰(ともやす)主将(3年)が先制3ランを含む2安打4打点の大活躍。先発全員安打となる17安打13得点で春の集大成を飾った。投げてはエース右腕、谷地亮輔(3年)を温存し3人の投手リレーで逃げ切った。夏の福島大会15連覇に向けて大きな弾みをつけた。

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春決勝で17安打13得点の猛爆だ! 口火を切ったのは坂本主将だった。1回無死二、三塁の場面、右打席に立った。カウント1-0からの2球目。真ん中高め直球をしばき上げた。打球は左翼芝生席に向かって一直線。表情を一切崩さずダイヤモンドを周回し、本塁で仲間とハイタッチを交わした。「何も考えずに、来た球を打つ。ランナーがいることを忘れるくらい、集中していた」。シンプル思考を貫き、先制アーチで結実させた。

苦しんだ分だけ、選手は強くなる。昨秋は県大会2回戦で、東日本国際大昌平に6-7で競り負けた。ベンチ前で泣き崩れる選手もいた。今冬から主将を務める坂本を中心にチーム作りから始めた。「チームのことを考えるようになった。どうすれば、負けないチームになるのか」。小、中とリーダー経験はなかった。前主将の内山連希(18=東洋大1年)に電話で相談するなど、試行錯誤を積み重ねた。短い秋に悔しさをにじませながら、長い一冬を過ごし、春の福島を制した。坂本主将は自信に満ちた表情で言う。

「主将としてやってきたチーム作りの過程は決して間違っていなかった」

今大会は準決勝まで背番号1の谷地を軸に、3試合連続完封勝ちを決めた。決勝はエース温存で3人の投手リレーで逃げ切り、斎藤智也監督(57)は「起用していなかった投手を使うことができた。それは良かったかなと」と振り返った。

まだ道半ば。気持ちは約1カ月半後の最後の夏に向かう。坂本主将は「優勝してうれしい気持ちはあるけど、油断せずに1日1日、時間を大切にしていきたい。自分たちの代で甲子園に出場して、東北勢初の日本一をつかむ」。夏は戦後最長の地方大会14連覇中だ。前人未到のV15に向かって、春の財産を糧に聖光ナインは再び歩み始めた。【佐藤究】