夏の甲子園に忘れ物を取りに行く。第103回全国高校野球選手権千葉大会(7月1日開幕)の組み合わせ抽選会が8日、千葉市内で行われた。

専大松戸の吉岡道泰外野手(3年)は、今春センバツの中京大中京戦でダイビングキャッチを試みたが捕球できず、決勝のランニング2ランを許した。号泣した試合から約2カ月。悔しさを糧に、誰よりも強い気持ちで夏の県大会に挑む。またこの日、沖縄大会の組み合わせ抽選会も行われた。

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センバツの借りを返したい-。抽選会を終えた吉岡は、涙で終わった春を思い出した。「自分のせいで負けた」。試合直後から流れ出した涙は宿舎に戻っても止まらなかった。その時だった。「吉岡、もう1度夏行こう」。石井詠己主将(3年)からの言葉に「絶対に強く変わろう」と誓った。

あのダイビングには、迷いがあったという。ベルトよりも少し高かったライナー性の打球。走りながら「どう捕球しようか」と考えた瞬間、ほんのわずか、スピードが落ちた。「迷いが、あのプレーになった」。届かなかった球が転々とする間に、決勝のランニング2ランを許した。

あの打球を捕るために、ノックを受ける数を増やした。守備位置は投手の球の質、打者と打球の特徴から判断。1歩目を速くするため、構える際にかかとを少し浮かすようにした。優勝した春の関東大会では好守をみせ「あの(センバツでの)プレーがあったから強くなれた。でもまだ足りない」。あの悔しさは甲子園でしか晴らせない。

グラブには「甲子園で果敢に挑戦して自分は変われた」ことから「勇猛果敢」と刺しゅうされている。もう1度あの打球と同じライナーが来たら「必ず捕ってチームを勝たせます」と力強く言った。【保坂淑子】